Hydrangea game

□Hydrangea game Stage,1
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「…おい、おい!」

突然耳に響いた音に目が開く。
薄目に開かれた双眸に入った光は思ったよりも薄暗い。丁度カーテンを閉め切って電気を点けずにいたら日が落ちた、くらいだろうか。
しっかりと目を開けば映ったのは黒髪に吊り目がちな同年代の少年だった。

「大丈夫か?」
「うん。ちょっとふらふらするけど平気。ありがとう」

のそりと起き上がると頭がふらつく。そして僅かに身体が痛い。寝ていたのは幾つかくっつけられた机の上なのだから当然だ。
足を机から降ろして床へと付ける。
辺りを見渡せば目測で机が40脚弱。そして前方に教壇と黒板、後ろにはロッカー。
ざっと見ただけでもここが学校であることが分かる。机の大きさや掲示物から多分高校であろうと検討を付けた。
うむ、こんなところに来た覚えはないのだが。
目線を落として思考して、思わず呟いた。

「ここ、どこ?」
「あ、やっぱ君も分からない感じ?」

その声に顔を上げれば黒髪の少年はニコッと人好きのする笑みを浮かべた。
うん。イケメン。目の保養。

「ということは、君もよく分からない、と」
「そうなんだよなー。部活終わって部室に戻って、気付いたらここにいた、みたいな」
「うん、私も同じようなものだね」

部活ってことは高校生かな。彼は着替える前だったようで、ジャージを纏っている。ジャージのロゴはSYUTOKU。

「ん?秀徳?」
「あ、うん。秀徳高校一年の高尾和成です!つーか秀徳知ってた感じ?」
「うん。うち秀徳近いし、近所の子が秀徳生だから。頭良いのね、高尾くん」
「へへ、サンキュー。君は?」
「弓削みのり。K大一回生」
「え、歳上!?すんません!」
「いいよ、別に。敬語も要らないから」

そんなに若く見えたか。苦笑しつつも軽く彼を許す。そんなに年齢も変わらないし、直の後輩でないならそんなに畏る必要もないし。
高尾くんはバツが悪そうに苦笑し、あざっす、と礼を言った。

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