▲ SEVENTEEN Novel ▲

□嘘
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「ヒョーン!」

手を振りながら教室に入ってくる。

「あ、あの子また来てるね。
まるでジフン君の犬みたいね。」

「キム・ミンギュの体格なら大型犬ね。」

「だねー。」

近くの女子の会話が聞こえる。
普段はイヤホンをしているが曲は聞いていない。
なので周りの会話は丸聞こえだ。

「ヒョン、イヤホン外しておれの話聞いてくださいよ。」

俺の机に覗き込むようにして見てくる。
仕方が無くイヤホンを外す。
こうしてミンギュが突然俺のところに来るのは大抵ろくな事がない。

「ココでは話しにくいので中庭行きませんか?
ついでにお昼食べましょ?」

「悪いけど提出用の課題があるから。」

「ヒョォーン!
ちょっとだけですから聞いてくださいよぉ。」

「何で僕なんだよ。
ウォヌやスングァンがいるだろ。」

「ジフニヒョンじゃなきゃダメなんですよ!」

ミンギュの大声が教室に響く。
皆が一斉にこちらを見ている。
こんな状態で教室にいられない。
ミンギュの腹を一発殴り、手を引っ張って教室から出る。

「いてっ!」

「自業自得だ。
教室で大声出して。」

購買でパンを買い中庭に行き、なるべく人の少ないベンチに座る。

「で、話って何だよ。
言っとくけど食べてる間に聞くだけだからな。」

「ありがとうございます!」

ぺこっと一度お辞儀をするミンギュ。
何だかんだ言って可愛い弟分である。

「実はですね、女の子に告白されまして…」

「恋愛の相談ならお断りだぞ。」

何たって経験かないのだ。
相談にすら乗れない。
それどころかこっちが相談にのってほしいくらいだ。

「違いますってば〜
ちゃんと最後まで聞いてくださいよ。
その告白は断ったんです。」

「何で。
付き合えばいいじゃないか。」

何だか自慢をされてるような気分になりパンを思いっきりかじる。

「いや、何だか…怖いような感じがして。
それに断った後も怖くて。
何でとか、どうしてとか問い詰められちゃって…」

「それで?」

「咄嗟に嘘を…」

「どんな?」

「彼女がいるからって。
そしたら会わせないと信じないって言われて。」

「それで?」

「言い合ってるうちにだんだんムキになっちゃって、次の日曜日デートだから見せてやるって…つい。」

「それで何で僕に相談することになるんだ。」

何だか嫌な予感がする。

「ジフニヒョン…
おれの彼女になってください。」

「はぁ…」

何でそうなるんだ。
こいつはバカか?
いや、バカだった。

「何で俺なんだ。
妹は?」

「顔が似すぎでばれますよ。」

「ジョハニヒョンの妹。」

「俺がジョハニヒョンに殺されます。」

「友達。」

「友達が俺の事を好きになる可能性が。」

「ジョハニヒョン。」

「女性にしてはガタイが良すぎますよぉ〜」

文句が多い。

「だからってなんで…俺なんだよ。」

「ジフニヒョンだったら体格だって女性と変わらないし、声だって1番違和感ない。
手足だって出しててもわかんないですよ。
それに落ち着いてるし、俺に惚れる事もない。
全部クリアしてます。」

「ふざけるなよ。
だいたい俺となんか付き合いたいか?
相手も納得するわけないだろ。」

「そんなことないですよ。
とりあえず今日の放課後おれの家に来てください。」

ニコニコしながら言うミンギュに嫌な予感がする。
放課後ミンギュに会う前に帰ろう。
そう心に決め、昼休みは結局話を聞いて終わってしまった。
今日の最終授業、終了のチャイムがなって教室の出口を見るとすでにミンギュの背中が見える。

「なんでもう居るんだよ…」

思わず愚痴が声となって出る。

「ジフニヒョン!
迎えに来ましたよ。」

ヌナキラーは伊達じゃない。
キラキラとした笑顔を俺にむける。
周りは可愛いや王子様みたいと騒いでいるが俺にとっては大型犬が出口で待っているようにしか見えない。

「ヒョンのことだから先に帰りそうで…」

へへへと言いながら頬をかくミンギュ。
そのつもりだった。
恐ろしい犬の嗅覚。

「じゃ一緒におれの家行きましょ?」

そう言って手を握られる。
びっくりして振りほどくとポカーンとするミンギュ。

「心配するな、ちゃんと行くから。」

「す、すみません。」

ミンギュも無意識にやっていたのだろう。
こちらが過剰反応している様に思えて恥ずかしくなる。
何だか気まずくなりそのまま無言で家まで行く。
ミンギュの表情を見ようと目線をあげる。
ミンギュの方はさほど気にしてないのか鼻歌を歌っていた。
そうだ、こいつはバカだった。

「着きましたよ、ヒョン。」

どうぞと玄関の扉を開けてくれる。

「おじゃまします。」

「いらっしゃい。」

女性の声が聞こえパッと顔を上げるとそこにはミンギュにそっくりの女性が立っていた。
内容が内容なので家族は居ないと思ったが妹は居たのか。

「兄貴、準備できてるよ。」

「ありがとぉぉぉぉぉぉ!」

叫びなら妹に抱きつこうとした瞬間、ボコッと鈍い音がする。

「近づかないで。」

冷たく言い放つ妹。
家族でもこんな扱いなのか。
妹に言われてシュンとなりながら俺の部屋に行きましょうと言う。
少しミンギュにも優しく接してやろうと思った。

部屋に入ると女物の服やウィッグなどすでに準備が進められていた。
俺はまだやるなんて言ってないぞ。
静かに怒りの炎が燃える。

「ヒョン、とりあえずコレ着てみてください。」

そう言って差し出されたのは白色のワンピース。
俺は男だぞ。
そんなひょいひょいとプライドが捨てられるわけではない。

「…無理。」

そういって部屋の扉を開けるとミンギュの妹がコテなどを持って立っていた。
そしてわかってしまった。
妹は俺より身長が高い。
キム家の遺伝子が羨ましい。
少しショックを受けながら妹の横をすり抜ける。

「待って!」
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