▲ SEVENTEEN Novel ▲

□蝶の墓
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君が眠っている間
オレは君のそばに立っている

「スングァナ、今日も来たよ。
調子はどう?」

何度もこの状態を見ると涙がこみあげる。
花を花瓶に入れ、ピクリとも動かないスングァンを見つめる。
それが苦しくてたまらなくなり部屋を出る。

扉を閉めながら涙を拭う


オレがスングァンを好きになった時、スングァンもオレを受け入れてくれた。
お互いの気持ちをしっかり持っていれば大丈夫だと思っていた。
だが男同士で付き合う事は意外と大変で。
周りには理解されない、親にも親不孝者と言われた。
それでも何度も何度も話し合って、お互いの両親が賛成してくれる様になった。
やっとオレとスングァナは同棲するため準備をしている。

「ボノニ、やっと一緒になれるな。」

そうやって笑うスングァンの顔を思い出す。
オレも笑って幸せだった。


でも神様というものは残酷だ。
スングァンが買い物帰りに歩いているところに車が突っ込んだのだ。
意識不明の重態と連絡を受けてすぐに病院に向かった。
顔には痛々しく包帯が巻いてある。
ところどころ見える血が事件の悲惨さを物語る。

「…スングァナ?」

頬をそっと撫でながら名前を呼ぶ。
自分がしっかりしないといけないのに名前を呼ぶオレの声は震える。
連絡を受けたときに意識不明で今後も植物状態だと聞いていた。
それでも名前を呼ぶ。

呼んでも返事はない

わかっている。
だけど

どうかオレの名前を呼んでくれ″

何も言わないってわかってる
言えないってこともわかってる
でも、もしかしたら
何か言ってくれるんじゃないかと

静かに耳を澄ませて

ただただスングァナを見つめる。
あんなにうるさかったスングァナは今では何も話さない。


スングァンの母親に言われた言葉。

「スングァンのことは忘れてもいいのよ。
あなたはあなたの道を進みなさい。
じゃなきゃあなたも息子も可哀想。」

だがオレはスングァンを忘れられない。
ふと足が向くのはスングァンの住んでいた家。

まだ君の家を彷徨っている
きっと、前みたいにオレを見て
微笑んでくれる君を思い浮かべながら

スングァンの母親の言うとおりに自分の新しい道を進めば、オレはだんだんスングァンの事も2人の思いでも忘れていくだろう。
会えなくても
オレの心はまだ君と居るのに

月日が流れ
オレもいずれスングァンに忘れられるだろうか

会えない日が続けば続くほど考えてしまう。

これ以上は耐えられない
君を忘れるオレを許してほしい


忘れれば
オレの涙も乾いていくだろう
もう涙が流れることもないだろう

忘れよう、そう思っても足が向くのはスングァンと思い出がある場所ばかり。
スングァンの笑顔思い出す度、つられて笑顔になる。
そんな日常がどれだけ幸せだった。
今ではオレのそばで静かに眠っている。
深くなる息づかい

傷は癒えたのに未だに目を覚まさない。
あんなにうるさい奴なのに一言も話さない。
そんな現状がオレを苦しめる。


オレはまた町に出て
一日中君を探すことになるんだ
スングァンとの思い出を。


それはきっとオレの運命だから
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