▲ VIXX Novel ▲

□限られた時間 下
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次の日珍しく早く起きたのでテグニヒョンの様子を見に行く。
テグニヒョンはそうとう疲れていたのかぐっすりと寝ているように見える。
近寄って表情を見ると泣いた痕が残っていた。
それをそっと触れる程度に親指で撫でるようになぞる。
起きているヒョンにこんなことしたら、まず嫌がられるだろうが寝ている間くらいは許して欲しい。

「んっ…」

くすぐったいのか寝返りをし、表情が見えなくなる。
もう少し寝かせてあげたいけれど今後のことも考えて2人で話が出来る話がしたかった。

「ヒョン、起きてください。
今日は公開ラジオの仕事のあとに地方に飛行機で行くのでそのことで話しがしたいんです。」

「…ん。」

まだ眠たいのか猫のようなあくびをしているヒョン。
寝癖なのか耳の後ろの髪の毛がはねてしまっている。
髪の毛を直そうと髪を撫でると無意識なのか顔を摺り寄せてくる。
なんだか猫よりも小動物のハムスターのようだ。
髪色から余計にそう思えてしまう。
ずっとヒョンを撫でていると目が覚めたのか、自分のしていることに気づき恥ずかしかったのか僕の指を噛まれた。
すっかり目の覚めたヒョンと一緒に朝ごはんを食べてこれからの話になる。

「お医者さんも言ってましたけどサングラスをかけましょう。
今のヒョンには照明どころか太陽の光すら毒なんですから。」

移動のときは2人でサングラスをかけることでファッションとしてテグニヒョンもすんなり納得してくれた。
だが肝心の照明が強いステージなどでは曲のコンセプトやカメラ映りがあるため頑なに拒まれる。
それにステージでサングラスをかけてるとそれだけで疑問に思われ気づかれる可能性があるから余計に嫌なのであろう。

「絶対にステージではかけない。」

そう言い切るテグニヒョンに何も言えなくなる。
だが僕も譲れない部分もある。
「わかりました。
その代わりダンス以外は僕が前を歩きます。
ダンスは問題ないと思いますがステージによってはダンスの構成自体が変わりますから、その時は僕の指示に従ってください。」

テグニヒョンもそれで納得してくれたのかコクリとうなずく。


それからというもの移動の時などは僕が必ず前を歩き、危ない場所があればそれを伝える。
そんな日々が続いた。
僕とテグニヒョンが一緒に移動しているのに最初こそメンバーやマネージャーが不思議がっていた。
だがLRの活動時期に「レオヒョンからたくさんの愛を受けた。」という発言をしていたため今では日常として受け入れているように見える。

精一杯テグニヒョンのサポートをしているが、やはり視力は良くならない。
それどころか悪化してきている。
テグニヒョンも言わないが見えないときに眉間の皺がよっている。
そろそろ他のメンバーにばれてしまうんじゃないかと心配になる。

そんな中、事件は起きてしまった。
この生活にもお互いにだいぶ慣れてきた頃だった。
事務所の階段から落ちたのだ。
普段行っている場所だからと僕はヒョンを1人で行かせてしまったのだ。
テグニヒョンも言わないが僕に迷惑をかけていると思っているのか、なるべく自分でできることはするように心がけていた結果だった。

今思えば階段は照明はあるが事務所の雰囲気に合わせて照明をおとしている。
きっと見えない状態で階段を降りようとしたのだろう。
事務所の階段に手すりはない。
踏み外した時のことが想像できて怖くなった。
マネージャーの連絡によれば運良く転落時に地面についた手首をひねっただけだと言う。
全治3週間といったところだ。
だが問題は今回ケガをしたことで念のために精密検査を受けることになった。
最近活動で忙しかったため事務所も体を心配してメンバー全員が一緒に全身検査行きだ。
その中には当然だが視力検査も含まれていた。
もちろん通院する病院は事務所公認だろうからテグニヒョンの視力を誤魔化すことができなくなる。
だが僕たちは逆らうこともできずにただただ検査を受ける。
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