▲ VIXX Novel ▲

□限られた時間 上
1ページ/2ページ


いつからだろうか。
レオヒョンの様子が気になり始めたのは。
思い返してみれば、最初に疑問を持ったのは『LR』の活動を始めたときに2人でよく作業室にこもって音楽を作っていた。
一緒に生活している中でドアや壁に肩や手をぶつける瞬間をよく見かけるようになった。
最初は疲れからきているものだと思っていた。
LRとしてのユニット活動も無事に終わりをむかえレオヒョンの異変も忘れかけていた。
そして休む暇もなくVIXXとしての活動が始まった。
「Chained up」のMVを撮影時、撮影場所になった廃墟のような建物は冬だからかとても寒く、休憩時間には温かい飲み物やお菓子などが配られた。
僕はまだ飲み物を持っていないレオヒョンに尋ねる。

「ヒョン、コーヒーでいいですか?」

お菓子をモグモグ食べながら無言でコクリとうなずくのを確認してからコーヒーを手渡す。
ヒョンはコップを掴もうとして1度空振りしてからコップを掴んだ。
距離感がつかめなかったのだろうか。
前に感じた不安も蘇り少し心配になるが、当の本人は平然としているように思える。
だが不安感は拭えず、事あるごとにチラチラとレオヒョンの様子を確認するのが癖になっていた。
「Chained up」でカムバックした僕たちは忙しく、今日も音楽番組の収録に来た。
何度来てもカムバックの日は緊張する。
マイクを配られ、ふとレオヒョンの方を見るとマイクをつけるのに時間がかかっていた。
それをエニョンがすばやく見つけ「仕方がないなぁ〜」なんて嬉しそうに言いながらつけていた。
その日、収録も無事に終わり舞台裏にはけようと階段を下りる。
目の前にいるレオヒョンの様子がおかしいことに気づいた。
ふらふらとしており、いつもより階段を下りるのがゆっくりだ。
まるで足元の段差を一段一段、確認しながら降りているように見えた。
そのうち足を踏み外す瞬間が見えて慌ててレオヒョンの腕を引き体勢を立て直す。

「大丈夫ですか?」

「…あぁ悪い。」

レオヒョンのいつもどおりの言葉使いとは裏腹に合わない目線。
日に日に疑問が僕の中で増えていき、やがて一つの仮説が出てきた。

「レオヒョン、話があります。少しいいですか?」

活動もひと段落ついた頃、レオヒョンを作業室に連れて行く。
同じ宿舎で暮らしているメンバーは何事かと興味津々に聞いてきたが、個人的な相談と言いそれとなく誤魔化す。
自分が考えた仮説が間違っているといいのだが。

「…わかった。」

そう言ってついて来てくれることにホッとする。
ここで拒否されては話が進まない。
作業室に行き誰も居ないのを確認し、思い切って尋ねる。

「レオヒョン、もしかして目が見えてないんじゃないですか?」

ヒョンにとっては予想外の質問だったのか、目を見開き驚いてるように見える。

「……問題ない。」

少し沈黙が続いた後、レオヒョンが呟くように言葉を発する。
僕は根拠のないその言葉にいらつきを覚え反論する。

「何かあってからじゃ遅いんですよ!
最近はどんどん危なかっしくなるし、これからどうなるかもわからないんですよ。」

思わず感情的になって怒鳴ってしまったので後半はなるべく諭すように話す。
レオヒョンもわかってくれたのか下を向いたまま何も言わない。

「病院へは行ったんですか?」

僕たちにそんな暇がないことはわかっているが確認で聞くとレオヒョンはフルフルと首を横に振る。

「とりあえず病院に行きましょう。
疲れからくる一時的なものかもしれませんし。」

そうであってほしいと希望的感想を言う。
レオヒョンもうなづく。
次の休暇日に僕たちはメンバーにも事務所にも内緒で病院に行くことにした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ