▲ VIXX Novel ▲

□狂おしいほど愛おしい
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「テグン。」

名前を呼ばれて振り返るとハギョンが立っていた。
心なしか目に生気がないのが気になる。
疲れているのだろうか。

「何?」

「昨日どこに行ってたの?」

突然の質問に驚いた。

「昨日はウォンシガと一緒に出かけた。」

最近『LR』としてユニットを組んでから一緒に過ごす時間が他のメンバーに比べて多くなった。
そしてあまり話さない俺と違ってウォンシクはきっちりと話すことは話してくれる。
可もなく不可もなく、そんなお互いの距離が気持ちよく感じ私生活でも一緒に行動することが前より増えた気がする。

「・・・んで」

ハギョンが何か呟いたがはっきりと聞こえない。
聞き返そうとすると、バッと顔をあげ腕を捕まれる。

「何で!
何で、最近ウォンシガとばかりいるの?
テグナは僕がいないとダメでしょ?
テグナのこと1番わかってるのは僕なんだよ!」

いきなりハギョンは声を荒げ言った言葉は俺にはよくわからなかった。
俺がなにも言わないで居ると捉まれた腕にハギョンの手が食い込んで痛い。

「何が言いたいかわからない。
痛いから離せ。」

「・・・・・・・」

しばらく沈黙が続き、やがて捉まれていた腕が開放される。
急なハギョンの態度の変化に違和感が残るがこのまま話をしてもイライラするだけの気がして自室に戻ろうと歩こうとしたときだった。
不意に鋭い痛みが腕にはしる。

「いっ!」

思わずその痛みの先を見るとハギョンが俺の腕に注射器を刺しているのが見えた。
視界が揺れ、立っていることすらおぼつかなくなり床に膝をつく。
そこで意識が途切れるのがわかった。



「うっ・・・・」

少しぐるぐるとする視界がだんだんと鮮明になっていく。
途中ので意識が途切れたのだ、ここがさっき居た宿舎のリビングでないことはわかっている。
どこだろうかと今寝ているベッドから降りようとすると異変に気づく。
手首・足首に手錠がはめてるのだ。
これでは降りるどころか上半身を起こすのがやっとの状態である。


ちょうど眼の前の扉が開き、ハギョンが現れた。

「起きたんだ、テグンおはよう。」

動揺している俺と違い嬉しそうにしているハギョン。
考えてることがわからない。

「これとって。」

これと言いながら手を上げ手錠を示す。

「嫌だよ、とっちゃったら此処からいなくなるでしょ?」

「あたりまえだ。」

キッと睨むが効果は無さそうだ。
むしろニコニコと笑っている。
いつからこんなになってしまったんだろうか。
ユニット活動をしていたとはいえ他のメンバーとは普通に会っていたし、その時も異変はなかった。

「だいたいテグナがいけないんだよ。
僕しかいないって言ったのに友達作って仲良くするなんて。」

「許さないから。」

最後の一言が鮮明に聞こえて、恐怖からか鳥肌が全身にたった。
だが気になっていることがある。

「仕事はどうする。
俺たちはアイドルだ。
此処にずっといるわけにはいかない。」

「・・・わかってる。
わかってるけど今は一緒に居てほしいんだ。
ペンのためのアイドル『レオ』としてじゃなく、1人の男『テグン』として僕の隣に居てよ。」

ハギョンの目からつぎつぎと大粒の涙が溢れる。
こぼれた涙は頬を伝い服にしみをつくっていく。
俺の方へ歩み寄り俺をギュッと抱きしめる。
離さないという感じではなくすがるように。
まるで全身で「行かないで」と伝えてるように思える。

「ハギョン、一度しか言わないからな。
俺はどこにも行かないしお前のそばを離れるつもりもない。
愛してるよ。」
口下手な俺は思っていることを正直に話してみた。
ハギョンは目を見開いて驚いているようだった。
その反応を見て少し恥ずかしくなり顔を背ける。

「テグナぁ〜!」

先程の声色と変わりいつものハギョンの声である。
そのことに少し安心しながら、頭を撫でてやる。
言葉は大事だな、何て当たり前のことを思う。
ガチャンと金属の音とともに手足が楽になる。
心が満たされたのか、ハギョンが手錠を外していく。
さっきのことが嘘のように「痛かった?」など聞いてくる。
不安定な恋人ができたなと思う反面、そんなハギョンが可愛いと思ってしまう自分はそうとうなのだろう。

ふいにコンコンと扉をノックする音が聞こえる。

「はーい!」

ハギョンが機嫌よく扉を開けに行く。
すると意外な人物が現れた。

「ヒョン、機嫌いいって事は誤解、解けましたか?」

扉の前に立っていたのはウォンシクである。
話を聞けば恋人であるハギョンよりウォンシクと一緒に居ることに嫉妬したハギョンはウォンシクにそのことをそのまま伝えたそうだ。
ウォンシクはユニット活動をしているからだと言ったが納得してもらえず、ハギョンは結局テグンに直接聞くと言ってその場を去った。
心配になりハギョンを尾行して何あった時のために外で待機していたという。
よく出来た弟だ。

ベッドから起き上がり歩いた瞬間、目眩がしその場で膝をつく。

「ヒョン!?」

ウォンシクが驚き俺に駆け寄る。

「あぁ、まだ切れてないと思うからそのまま安静にしててね。」

冷静にハギョンが答える。
目眩で思い出したがハギョンに気を失う前に薬をもられたのだ。
キッと睨む。

「大丈夫だよ。
変なもの入ってないし、副作用とかもないこと確認してるから。」

相変わらずニコニコして答える。
友好関係の広いハギョンのことだ、誰からかこっそり薬を仕入れたのだろう。
はぁとため息をつく。

「ヒョンもすごい方に好かれましたね。」

小声でウォンシクが言う。
ウォンシクの肩を借り立ち上がる。
部屋を出るとハギョンがドラマ撮影のためにとった部屋だとわかった。

「帰るぞ。」

そう言って俺たちは宿舎に戻る。
もちろんハギョンも一緒である。

「うん。」
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