▲ iKON Novel ▲

□触れ合う思い
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無事に「iKON」としてデビューできた俺たちに久々に1日オフの日が与えられた。
デビューしてから初めての休日である。
みんな明日は何をするか、どこに行くかなどの話で盛り上がっていた。

「ハンビナ!明日はどうするの?」

ジナンヒョンがこっちに走ってきて尋ねてきた。
身長差もあってジナンヒョンは上目遣いで俺を見るかたちになる。
最近ヒョンはMVの撮影のため金髪のパーマで可愛らしい外見になっている。
そのうえ自分の可愛さを自覚しているため、たまに男の俺でもドキッとするような仕草をするときがある。
「ハンビナ?」ともう一度きかれ慌てて答える。

「明日は午後まで寝て、それから曲を作るつもり。ヒョンは?」

「僕は実家が済州島だし明日は寮に残ってゆっくりするつもり。」

それじゃあ、いつもの俺とジナンヒョン、家族がアメリカにいるバビヒョンでいるようになるのか。
いつも一緒にいるが3人きりと言うのは中々に久しぶりじゃないかと思う。

「今回は珍しくバビは残らないってさ、友達と遊びに行くんだって嬉しそうに話してたよ。」

若干ふくれっ面なジナンヒョン。

「でも二人だけって久しぶりじゃない?」

パッと表情をかえ、俺の腕に抱きつきニコニコと嬉しそうに言う。
少しドキドキしながら「そうだね」と平然を装い答える。

「今日の練習はこれで終わり!
明日はしっかり休んでくれ。
ただし明日の夜には寮に戻ってくること、以上解散!」

マネージャーの一声によりみんなそれぞれの準備ををした荷物を持って出て行く。
みんながわいわいと出て行ったあとに残ったのは俺とヒョンの二人である。


しばらく沈黙が続き、俺は気まずさに耐えられず作業室に入る。
バタンと少し荒い音をたててドアに寄りかかりずるずるともたれながら床にへたり込む。
心臓がドキドキしているのを嫌でも意識してしまうのだ。
前はヒョンと一緒居てこんなことはなかったが、Mix&MATCHを撮影している時だった。
俺が疲れきって作業室の仮設ベッドで寝ていると、ドアが開き誰かが入ってきたことがわかった。
だがその時は疲れていて目を開けるのも面倒だったためジッとしていると、体に軽いが温かい感触が伝わる。
布団を掛けてくれたのだ。
さすがにお礼を言おうと思ったときだった。
壁に向き合うように寝ている俺のうなじあたりにチュという軽い音とともに唇の熱が皮膚ごしに伝わる。
何が起こったかわからず固まっていると「お疲れ様、ハンビン。あんまり無理はしないでね。」とジナンヒョンの心地よい声が聞こえる。
目をつぶっていてもわかる、この3年間一緒に過ごしてきたヒョンの声だ。
聞き間違えるはずがない。
その日からというものヒョンを意識してしまい、練習を除いてまともに見れていないような気がする。
それどころか話もできていない。
それでも問題なく過ごせていたのは、うるさいメンバーに囲まれていたからだろうか。
だが今日と明日はそうもいかない。
正直、気持ちの整理もできてないし、どすればいいのかもわからない。
作曲やダンスの振り付けを考えることに集中して問題の先延ばしではあるが気を紛らわせる。

2時間程たっただろうか、時計はもうすぐ次の日を迎えようとしていた。
喉も渇いたこともあり寮に戻る。
寮に帰り風呂に入り終わる頃には1時をまわっていた。
夜更かしをしてしまったと思いながら自室に入ると自分のベッドがすでにひと1人分盛りあがっている。
嫌な予感がするが、そのまま布団をそっとめくる。
そこには思ったとおりジナンヒョンが規則正しく寝息をたてながら寝ていた。

「ヒョン・・・」

俺が布団をめくっていて寒いからか寝返りをうつ。
丁度、顔がこちらの方へ向く。

「んっ・・・」

ゆっくりとジナンヒョンの目が開く。

「ヒョン、どうして俺のベッドで寝てるんですか?
もしかして部屋間違えました?」

前の出来事を引きずっている俺は気まずいとは思いながらも聞いてみる。

「うぅん、ハンビナを待ってたんだよ。今日はみんな居なくて雰囲気が違うように感じて1人だと落ち着かないんだ。
僕が寂しいって言うのもあるけど久しぶりに一緒に寝ようよ。」

眠たいのか目をこすりながら今にも寝てしまいそうだ。
この状態のジナンヒョンを動かすのは無理そうだ。
かと言って今の心境で一緒に寝ることはできない。

「ヒョン、また他の皆と一緒に寝ましょう。
俺は別の部屋で寝るから、そのまま寝てください。」

おやすみなさい。と言いそのままそっと部屋を出ようとするとパシッと手首を捉まれる。

「ヒョン?」

「嫌だ、離れたくない。
ハンビナ、最近僕のこと見てくれないし、話す回数も少なくなった。」

泣きそうな顔で手をギュッと痛いほど握られる。
弁解しなければと思うが言葉がすぐに出てこないのがもどかしい。
不意に腕を引っ張られ、そのままベッドの上に押し倒される。
ベッドに寝転がる俺と俺に馬乗りになるジナンヒョン。
そのままジナンヒョンとの距離は近づいていき唇同士が触れ合った。

「ヒョン・・・」

突然の行動に動揺が隠し切れず瞳は泳いでいるだろう。
体は心の動揺とは反して固まったままである。

「やっぱりあの時起きてたんだね。」

あの時とは作業室でのことだろう。
天井の薄暗いライトでは逆光になっていてジナンヒョンの顔は確認できない。

「ハンビナ、好きだよ。お願いだからずっと僕と一緒にいてよ。」

ジナンヒョンが甘えるかのように、俺の胸にコツンと額をくっつける。
ずっと考えないようにしていたのに、今の状況だと返事をせざるおえない。
まわらない頭を必死に使おうとするが、体験したことのないことばかりで頭がパンクしそうだ。

「もしも迷ってくれてるんだったら、答えて欲しい。
僕からしたキス、気持ち悪かった?
僕なんか嫌い?」

「そんなことない!」

さっきまで言葉なんてすぐに出てこなかったのに、今は考えるよりも先に答えていた。
よく考えてみれば、ジナンヒョンにキスされてから意識してしまったが、男同士で気持ち悪いとか考えたことは一度もなかった。
それどころか、どう話せば普通に見えるかをずっと考えていた。
今思えば、少女マンガに出てくるヒロインじゃないか。

俺が否定したことが嬉しかったのかホッとしているのを雰囲気で感じる。
だが沈黙が少し続いたことが不安なのか服をギュッと握ってくる。

「もちろん今すぐにどうこうしたいってわけじゃないんだ。
2人っきりのときとかにこうやって一緒に居たいんだ。
ダメかな?」

頭をコテンと可愛く傾ける。
若干流されるんじゃないかと思うところもあるけど、ジナンヒョンが嫌いなわけじゃない。
それに自分の気持ちにも気づくことができた。
断る理由がない。

「いいよ、ジナンヒョン」

「本当!?」

驚いた顔をして俺をギュッと抱きしめる。
その姿が何だか可愛らしく見えて抱きしめ返す。
心がスッキリしたことで急に眠気が襲ってきた。


目を覚ますとジナンヒョンが俺の顔をじっと見ていた。

「ヒョン?」

「カッコいいな、ハンビナは。」

ふふっと笑いながら言われる。
寝ているところをジッと見られてたと思うと恥ずかしくなり逆を向く。

「ハンビナ、コーヒー入れるから一緒に飲も?」

俺はそのまま黙ってうなずく。

「じゃ、少ししたらリビングにくるんだよ。」

時計はすでにお昼を指しているが遅めの朝ごはんを2人で食べる。
それからは色々な話をして、曲も考えたりしてるとあっという間に夕方になった。
今日一日で前よりもさらに距離が近くなり、とても充実した時間を過ごせた。

夜になると続々とメンバーが帰ってきていつものうるささに戻っていた。
ハンビンとジナンの距離が近くなったことを気づいてるメンバーもいればそうでないメンバーもおり、いずれはメンバーにも話したいと思た。


2015.11.06

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