▲ GOT7 Novel ▲

□心配
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「ジニョン、腹から声出せよ。」

新曲の練習をしているときにジェボムヒョンが突然言い始めた。
本番まであと少ししか時間がないからか皆がピリピリしている中、ジェボムヒョンの声が練習室に響く。

「わかってるよ。」

蚊が鳴くような小さな声でジニョンヒョンが返事をした。
それが気に食わなかったのか、眉のしわをさらに深めたジェボムヒョンが「お前の見せ場なんだぞ!もう少ししっかりやれよ!」と怒鳴った。


新曲が出るたびにこの喧嘩は起こっているような気がする。
もともと先に2人がデビューしたが、タイミングが悪かったのかその後活動が続くことはなかったと聞いている。
そのときのことを二人はお互いに引きずっているのだろう。
新曲でカムバックするとき二人は誰よりも真剣だと思う。
そのせいもあって毎回喧嘩するのだ。


でも今回は何か違うような気がする。
いつも注意するジェボムヒョンはみんなに注意することが多くジニョンヒョンだけに注意することなんてなかったのに。
それにジニョンヒョンだって笑ってごめんっていうのに。
言い返す姿を始めてみたような気がする。
そう思っていると、どんどん喧嘩はヒートアップしてしまっていた。

「わかってる!わかってるてばっ!」

ジェボムヒョンがジニョンヒョンの手首をつかんでいたがそれを振り払って練習室から出て行く。
バタンッと強く締められたドアの音がBGMも消えた練習室に響く。
ジェボムヒョンはジニョンヒョンが出て行ったドアを睨んでいた。



「さっきのは言いすぎじゃない?」

シーンとした空気の中、最初に話したのはマークヒョンだった。
他のメンバーもそう思っているのか浅くうんうんとうなずいている。

「何だか、いつもと違って本気じゃないように見えたんだ。それがすごくムカついた。」

ジェボムヒョンがまだドアを睨みながら言った。

「たしかにいつものジニョンにしては集中してなかったと思うけど、そんなに怒鳴るほどでもないと思うよ。」

マークヒョンが優しく諭すように言っているがジェボムヒョンは聞いてるのか聞いてないのかまだドアを睨んでる。


すっごく言いにくい雰囲気だけどジニョンヒョンが出て行ったままだ。このまま放っておくわけにも行かないと思う。

「あ、あのジニョンヒョンを・・・」

迎えに行ってきますと言いたかったがそれはジェボムヒョンの声によってかきけされた。

「ジニョンならその内戻ってくるだろ。」

それでもヒョンが心配なので迎えに行きたい。
そう思っているとマークヒョンが僕の肩をポンと叩いた。
まるで大丈夫とでも言うように。

「俺が迎えに行くよ。」

僕が言いたかった言葉をすんなり言ってくれたのはやっぱりマークヒョンだった。
さすが長男だなと思う。
マークヒョンはそのまま練習室を出るとジニョンヒョンが走り出した方へ歩いていった。


不安な気持ちでいると袖を引っ張られる感覚がした。
その方向に向くとベンベンが「ユギョミ、ジニョンヒョン大丈夫だよね?」と同じく不安そうな顔をして言った。
「大丈夫だよ。」と言いながらも不安で仕方ないのでこっそりマークヒョンの後を追った。


冷房のきいた冷たい廊下を歩いていると床に膝を着いているマークヒョンが見えた、声をかけようと一歩前に出ると床に倒れているジニョンヒョンの姿が見えてパニックになる。

「ユギョム、ちょうどいいところに来た。運ぶの手伝って。」

冷静なマークヒョンに言われ落ち着けた僕はジニョンヒョンの肩に手を回し力を入れて立ち上がる。
正直ビックリするほどジニョンヒョンは軽かった。
今回の新曲のコンセプトにあわせてダイエットでもしたのだろうか。
ジニョンヒョンをかついで歩こうと前を向くとジェボムヒョンが立っていた。

「ジェボムヒョン・・・」

さっきまで怖いほど鋭い目つきをしていたジェボムヒョンが嘘のように心配した顔でジニョンヒョンを見つめている。
僕がもう一度呼ぶとハッとした表情をした。

「ジニョンは俺が運ぶからユギョムは部屋のドア開けてくれ。」

ヒョンに言われてジニョンヒョンを預けて、障害になるドアを開けていく。
そういえばマークヒョンが居ないと思いあたりをキョロキョロとしていると僕の考えがわたったのかジェボムヒョンが話しはじめた。

「マークヒョンだったらマネージャーや事務所に連絡してくれてるよ。」

納得しながら最後、ジニョンヒョンの部屋のドアを開ける。
ジェボムヒョンはベッドの上に優しく置くと「ふぅ」と一息ついた。
僕は相変わらずどうしていいかわからず、ドアの前で突っ立っている。

「ユギョミ、もういいよ。ジニョンには俺が着いてるから、お前はもう戻れ。」



ヒョンに言われ仕方がなく練習室に戻る。
すると他のメンバーが一気に押し寄せてきた。
みんな一様にジニョンヒョンのことを気にしていた。
それに気になることがもう一つ、喧嘩をしていたジェボムヒョンと二人っきりにしてしまったことである。
それらのことを話してるといつの間にか戻ってきたマークヒョンが話しに混ざる。

「二人のことなら気にしなくても大丈夫だよ、なんやかんや言ってずっと一緒にいるし心配ないよ。」

ユギョムが「でも」と言おうとする前にボソッと「ジニョンも俺にかまってくれればいいのに」という声が聞こえてしまい何も言えなくなる。
でもマークヒョンが言ったとおり、しばらくすると二人は一緒に戻ってきて雰囲気も元に戻っていた。
ジニョンヒョンが笑顔でみんなに「心配かけてごめんな。」と謝ってる姿を見ていつものオンマのようなジニョンヒョンで安心した。
僕も一息遅れて「ヒョーン!」と言いながら抱きつく。
やっぱり家族はこうでなくっちゃ!
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