STORY
□寒い夜には
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Side Masaki
「あっ…雪が降ってきましたよ。」ゆりちゃんが窓を見ながら言う。もう、外は暗い。そこに白い雪が舞う。
「本当ね、外は寒いでしょうね。」
「他にお手伝いすることありますか?」
「大丈夫。ありがとう。」
「では、時間になったら、お迎えに来ます。」
ひとりになって、大きな窓に近づく。
大きな窓が鏡になって、私を映す。
大きく胸の開いたシンプルなイブニングドレス。
新作のジュエリーを引き立たす。
綺麗に着飾った、着せ替え人形…
愛を忘れた着せ替え人形…
いえ、違う。自分で選んだ道だ。
私の望んだ道…
雪を見て、彼を思い出す。
透き通るような白い肌、少し茶色いサラサラの髪、はにかんだ笑顔。
冷たい手…
こんな寒い夜。
どうしてるの?
笑ってる?
寒くはないかしら?
暖かい部屋で、誰かと一緒にいるの?
あなたを暖めてくれる、暖かい手を持ってる人
?
冷たい手をした寒がりな子…
優しい子やだから…どうか幸せでいてください。
私を愛してくれた子だから…
コンコン、ドアを叩く音。
「おー、綺麗だな。支度は出来てるか?」
ゆりちゃんと一緒に、祐飛さんが入って来る。
「はい!」
「じゃ、行こうか」