駄文其の2
□其の瞳に焼き付けるのは〜刺青〜
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冴島の指先が、真島の背中に触れると、真島はビクッと体を震わせた。
「なっ…くすぐったいやんけ!ちゃんと叩いてもらわんと困るわぁ…」
真島は振り向きながらそう言うと、今度は自分で胸を叩き出した。
(おっ、やっぱり胸ん所まで刺青入っとるんやな…)
冴島は、心の中でそう思いながら、真島が叩いてるのと同じくらいの強さで背中を叩いた。
ペシッ!と、乾いた音が響き、続けざまにまた手のひらを打ち付ける。
「はぁっ…!そうやっ…そこっ…!めちゃ気持ちいぃっ…!」
「なっ、何やねん…気色悪い声出しおって…」
「せやかて、ソコ、滅茶苦茶気持ちええんやで…?」
真島は、痒みがある部分に冴島の手を押し付けるようにして背中を擦り付けた。
「もっと…下もっ…!早くしてくれやっ…」
「お・おう、ここら辺、か…?」
先程叩いた部分より、少しだけ下にずらして叩き始めた。
「あっ…!イイッ…!」
痒みに悶えているのは百も承知だったが、思いの外若い冴島は、真島が漏らす喘ぎに似た声に、モヤモヤとした気持ちが沸いてくるのを感じていた。
「冴島…!もっと、叩いて…くれっ…!」
あまりにも色っぽく聞こえる声色で名前を呼ばれ、冴島は邪念を払うかのように、力任せに真島の背中を叩いた。
「――いてぇぇ!何しよるんや!」
バチッ!と、大きな音を立てたかと思うと、般若が平手打ちをくらったかのように、赤い手のひらの跡が浮かび上がってきた。
「叩け言うから叩いただけやで?そないな生っぽい声出されたら、何やおかしな気分になるやろか」
「な・生っぽいって…そんな声、俺出してたんか?」
真島は改まって冴島の顔を見るために振り返ると、少しだけ頬を赤く染めた冴島の顔を目の当たりにした。
「…冴島、お前、溜まっとんのとちゃうか?」
「なっ…!余計なお世話じゃ!」
「ヒヒヒ、せやったら、一緒にエエトコ行こうか?ピンク通りに新しい店出来とったで?」
脱ぎ捨てたシャツに袖を通しながら、真島はからかうように笑った。
「いらんわ。そないなトコお前と行ってもつまらんわ」
「フン、折角俺が奢ってやろうと思ってたのに…」
「…真島、関西弁、所々で忘れとるで?」
戸惑いを誤魔化すように、冴島は真島に突っ込みを入れる。
「なっ…まだまだ関西弁の道は長そうやな…」
「せやな…お前が店の姉ちゃんにエエコトしてもろうとる間も関西弁喋れるようになったら、板に付いた言うてもエエんちゃうか?」
「はぁ!?なっ…何言うとるんや!?…いや、せやなぁ…それもそうかもしれへんなぁ…」
冴島に言われたことを鵜呑みにしてか、真島は考えるように眉を潜めた。
「うしゃ、やっぱそう言うんやったら試したらなアカンな?お前が言い出しっぺなんやから、しっかりお付き合い頼んだでぇ?」
「せやから俺は行かん言うとるやろが!」
慌てふためく冴島を見て、真島は幸せそうに目を細めた。
2016.1.31
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