駄文其の2

□其の瞳に焼き付けるのは
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靖子が酒を買って帰ってきたが、やはり一杯じゃ酔えない。

「靖子ちゃん、悪いんやけど酒とツマミ、追加してくれへん?」

真島がお金を手渡してそう言った。

「ええけど、近くの酒屋、この時間やともうやってないで?」

ちょっと時間かかるけど堪忍な

そう言いながら、靖子はまた買い出しへと出ていった。

「…なんや、兄弟、眉間にしわ寄せて。色男台無しやで?」

「からかっとんのか?」

「いや、おちょくっとるんや」

「…ええかげんにせえよ真島」

冴島は、手に持っていた空の缶を、片手でグシャリと握りつぶし、テーブルの上へほおった。

「まあ、こうやって兄弟としょうもない話してイチャコラできるのも、今日が最後かもしれへんからな」

「イチャコラってなんやねん」

冴島が、呆れたように言うと、真島は無言のまま、冴島に近寄ってきた。

這いつくばるように寄せた体が、冴島を捕え、真島はぐいっと顔を寄せた。

「な・何しとんねん兄弟!」

「…シャバで兄弟の顔、こんなに間近に見れるのも、最後かもしれへん思うてな」

そう言いながら、チュッと音を立てて冴島の唇に己の唇を寄せた。

「!?何しよるんや、酔うとんのかいな!」

「今生の思い出や」

「アホかお前…」

「…俺はな、東城会やら組の繁栄何て言うのは、別に興味ないんかもしれへん」

「あ?」

「俺が興味あるんは…冴島、お前だけや」

そう言って、抱き締めるように冴島の肩に腕を回した。

「お前が望む事なら、俺は惜しみ無く手を貸すぜ。…お前がどこまで行けるのか、それを見るのが俺の夢だからな」

関西弁を忘れるくらい、真剣になって、冴島に語った。

「…もし、明日俺が死んでしもうたとしても、最後まで目ん玉見開いて、お前の背中、眼に焼き付けたるからな?」

「真島…」

「せやから兄弟は、俺に何があっても、自分の信じる道を、突き進んでくれや?」

冴島は、自分を抱き締める真島の頭を撫でた。

「…何いっとんのや、殺しても死ななそうな勢いしくさってからに…」

真島と兄弟の盃を交わしてから、殆どの時間を一緒に過ごしてきた。
今では靖子同様、本当の家族のように思っている。

「…せやで、俺は結構しぶといんやで?」

真島は、くりくりとした目を細めて、ニコッと笑い、


「俺に大河の夢、守らせてくれや…」



そう呟いた。



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