White Night
□3 思い出される過去
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*
…
私は、父や兄とは仲良くなかったから、母だけが頼りだった。
母も私とずっと一緒にいてくれた。
ずっと一緒な…はずだったのに
「おかーさんおはよー!!」
いつもどおり母の部屋を開けた。
しかしその部屋の中には、誰もいない。何もない。
「?」
(どこかにお出かけしてるのかな
待ってたら帰ってくるよね)
ずっとずっと、何年も待った。
しかし、母は帰っては来なかった。
(……もう私は、誰にも必要とされていない…)
そう思った頃から、愛歌の心は閉ざし始めていた。
*
ヒソヒソ…
『及川家の娘さん、感じ悪いっていうか…愛想がないわよねぇ…』
『お兄さんの方は当主もつとめてご立派なのにねぇ…』
屋敷に挨拶に来る貴族達は、みんなそう言っていった。
聞きたくなくても、耳に入ってくる。
最初は、とても悲しかったが、少しするともう慣れ始めていた。