FE 蒼炎/暁 二次
□哀悼
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「ぅ…、すみません。」
しゃくりあげながらも、恥じ入ってジルは下を向く。
「いや。構わない。」
軽率だったのだ。
ここへ来たときから、一度もこのような素振りを見た事はなかった。
いつも、楽しげに笑い、前よりずっと生き生きと見えた。
あれだけ慕っていたかに見えたものが、肉親の情とは案外冷たいものだ、そう思いさえしていたものた。
(見過ごしていたか。)
自分のことで精一杯だった。彼女を慮る余裕など、有りはしなかった。
寄る辺なく、孤児となった不安と哀しみは、ましてや敵味方に別れた罪の意識は、どれだけ彼女を苛んだろう。
「あの場にいたのか。」
父親の最期の場所は慣れ親しんだ故郷であった。
「あの戦いには、出なくて良いと…だけどいても立ってもいられなくて、民家の納屋に隠れて…。」
目の当たりにしたのは、父親の絶命の瞬間。敵に囲まれる様を、退路を断たれ、鋭く刃で貫かれる様を、飛沫く鮮血を。
「駆け寄る事も出来なくて…逃げました。」
視線を交わすこともなく、父娘は永遠に別れた。
「…後で皆でお墓を作ってくれて…あの子は大きすぎたから、一部だけ一緒に埋めて。」
その時の自分はーー。見るに耐えず、戦場を遠ざかった。
哀しみから逃れるために復讐に身をやつした。たった15の少女を一人、戦わせて。
なんと弱いことか。
「悪かったな…一人にさせて。」
俯く頭の旋毛辺りをグシャグシャと、雑把に撫でた。