FE 蒼炎/暁 二次

□雪辱
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「あっ、いいっ…そこ、ちがう、そこじゃないっ…ぅん…。」
簡易とはいえ、天蓋付きの上質なベッドは戦場には、いかにも不向きであった。
「ああ…へ…いか…ぁぁっ」
天幕の、この厚い幄の裏には、夥しい数の兵士に立番を申し付けてある。それを意に介さず、あらん限りの矯声をあげ、快楽を貪る、やはり普通の女ではない、どうあれ、ある種の傑物なのだとハールは思う。
「もう、…いい。」
プラハは愛撫を止めさせ、熱く火照った身体を上位に預けた。冷笑と供に見下ろしながら、陰唇を自らの手で開いて見せる。一瞬の悍ましさを堪え、一切の感情を絶ち、フィジカルの欲情のみに変換する。局部の膨張を確認すると、彼女は満足気に腰を沈め、粘膜の中に挿入し始めた。
ーー彼女は毎夜、立番の兵士の中からお相手を指名する。伽の相手として気に入れば無罪放免、粗相があれば度合いと機嫌に応じた懲罰が下される。
自分が呼ばれたのは今夜の3人目、1人目は彼女を満足させられず、2人目は体液で彼女の御身体をを汚してしまったから、だそうだ。二人とも、天幕から数人の兵士に引き摺られ、恐慌を起こしながら何処かに連れて行かれてしまった。恐らく2度と会うことはないだろう。
「お前は…動くんじゃないよ。」
粗い息の中、彼女はそう言って、腰を淫らに揺らし始めた。
「あ、ああっ、アシュ…ナてある様ぁっ…」
白い大きな乳房が揺れている。ハールの両腕を取ってそこに沿わせ、愛撫を要求する。全身をくねらせながら、自分勝手に高まっていく。
彼女の粘膜に、己が呑まれていく、喰われるような錯覚を覚え、吐き気が襲う。嫌だ、苦しい。だが、自分がイくことは赦されない。
どうか、早く昇り詰めてくれますように。肉壁の締め付けに、いつまで耐えればよいのか。
ふと、シグルーンの情愛を想う。そうだ、彼女の友愛に、報いなければならない。自分にしっかり刻み付けられた、一生忘れることはできないであろう、彼女の痕跡を夢想する。
自分を冷たく見下ろす酷薄な美女に、優美な彼女を重ね、乳房を優しく、時に強く愛撫する。やがて、奧にくい込んでゆく感覚だけが、己を支配し始める。
「んっ、ああぁっ…はあ。」
やがて彼女は勝手に昇天し、ドサッと横に身を横たえた。終わったのだ、フウッと溜息を吐く。
ーー事を終えて、天幕を出されたハールは、元の立番に戻った。隣の兵士が興味本位に顔を覗き見た後、軽蔑するようにフンと鼻を鳴らした。

「しかしお前、よっぽどの腰抜けだねえ。」
一夜が明けた翌朝である。欠伸を噛み殺し、自身の天幕に戻る矢先であった。目覚めの早いプラハに声を掛けられたのは。
「はあ。」
プラハは機嫌良さそうだ。
「きっと、あんなことばっかやってたんだろうね。」
ククッと笑う。
「…まあ、嫌いじゃないんで。」
「シハラム、だったっけ?あの田舎将軍。お前、一応アイツの片腕だったんだろ。それが、最期の戦の時は逃げる準備に忙しかったそうじゃないか。」
思わずピクリと肩が震え、一瞬顔が強ばる、が、すぐに弛んだ表情を取り戻す。
「…負ける戦はしませんよ、馬鹿馬鹿しい。」
さも愉快そうに笑った。
「聞けば?あいつ、娘の方は敵に取っ捕まって、挙げ句に向こうの先鋒を担いでるらしいじゃないか。本当に、竜騎士ってのは爽快なほど計算高い。」
ーージル、まだ無事でいるといい。いや、いっそ父を追う方が幸せか。
「…生きてますかね、そいつは。」
「さあね、知ったことじゃないさ、どうせ死んでるよ、弱い奴の遺伝子は弱い。生きていたにせよ、敵に寝返るようなバカは精々いたぶってやるさね。ん?どうかしたかい?」
「いえ、何にも。」
まずかった。一瞬、ブルッと震えたのを見逃さなかったようだ。一時の油断も出来ない。
「…まあいいさ、ところで貴様、今夜も来な。…腰抜けは嫌いだが…、フン、身体の相性は、ここの中じゃ、いいみたいだからさ。」
「…仰せのままに、女王様。」
眼前の仇に膝を折る。見下ろす彼女は、酷薄な笑みを浮かべた。
「その憎まれ口は、嫌いじゃない。」
プラハは振り返り様に足下の砂を蹴りあげると、側近を従え、川向の本陣へ去った。砂を浴びたハールは、やっと立ち上がって砂を払う。嘲笑う兵士達を睨みつけ、自分の天幕に向かって歩き出した。
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