FE 蒼炎/暁 二次

□ラッキー・アイテム
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爽やかな春風の吹く休日の朝、轡を並べて、広い屋敷林を抜ける。
(なんで俺、こんなことに?)
「マカロフ様ぁー、ありました、こっち、こっちですわ。」
「う、うん。分かった。」
今日はステラお嬢様と、編籠にサンドイッチを持って、ピクニック・ランチなんである。何故そうなのかと言えば、朝叩き起こされた時から、そういう日程が決まっていたんである。
数ヶ月前から、こちらの屋敷でお世話になっている。鉄火場で負けた後、何時もの如く、強面のお兄さん達に取り囲まれていたところを、救出、もとい拉致され、以来こちらに軟禁されている。

到着地点は、真っ白い絨毯みたいなシロツメグサの花畑。ヒラヒラと2匹のアゲハチョウが舞い、恋を語らう。
ステラさんが太陽の下で笑う。天真爛漫な耀きに、クラクラと目眩が…そうだ、二日酔いで、体調が優れないからだ。
木陰に騎馬を繋ぎ、暖かな日射しの中に、彼女が拡げた敷布の上、並んで腰掛けた。
手持ちぶさたな俺は、真ん中に並べられたサンドイッチを一切れ摘まむ。
「美味しい、ですか?」
「ああ、塩加減がいいよ。」
「嬉しい!私、早起きして頑張りましたのよ、ほら、余り自分で作ったことがないから…、マーシャ様には、敵わないかも、ですけど…。」
「え、んなこたないって、ほら、アイツなんか、貧乏性だから、キュウリのへたまで入れてやんの。」
「…。」
ステラさんはニコニコ笑っている。いかん、会話が繋がらない。そうだ!チャンスじゃないか。今日こそは、ずっと聞くに聞けなかった、例の、本質的な話題に迫らねばなるまい。
「あの、さあ…。」
「はい?」
「あ、いや、何でもない…です。」
こんなキラキラの笑顔に誰が勝てるって言うんだ!
大体、おかしいよな?伯爵家だぞ?俺みたいな男にご令嬢が入れ込んだ場合、断固止めさせるだろ?その為に、色々妨害工作とかする筈だろ、俺のこと、拉致ってくるとか、あり得ないだろ。
そうだ、勇気を出せ!彼女の為にも、俺は真実を告げねばなるまい。
「あの!」
____どうして、俺なんかを気に入ってるんすか?俺は…。
「あ、ありましたわ!」
「は、はい〜?」
マカロフの目前に差し出されたのは、小さな一葉の葉っぱ。
「見て、四つ葉の、クローバー。」
どうぞと差し出されるままに、マカロフは繊細な茎を摘まむ。
「ラッキー・アイテムですわ、これで、明日は、ジャックポット、ですわね?」
ああ、そうか、敵わないんだ。屋敷の人達も俺も、この子の願い事、叶えてあげたくなっちゃうんだな。
「あの、ありがと。」
彼女が潤んだ瞳で見つめている。やがてゆっくり瞳を閉じる。桜色の唇が光る。艶々した黒髪、真っ白い肌、ピンクに染まった頬。いいのかな俺、こんなことしても。
そっと、唇を重ねる。ゆっくりと、柔らかに、確実に。
うららかな春の日、俺のラッキー・クローバー、本当のラッキーは、今のこの瞬間。

(おわり)

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