FE 蒼炎/暁 二次

□帝都にて 男子編
1ページ/1ページ

「あーあ、何か、イッすよねー、女の子達、楽しそうで。ね、シノンさん?」
「ああ?あんなん、うるせえばっかだよ。」
焼き魚の匂いに釣られてやって来た篝火の脇には、男二人が胡座をかいている。
「おや、ネコじゃねえか、ほら、こっち来い。」
翳された魚に吸い寄せられる。小生、そのまま大柄な男の膝に収まった。
「全く、どいつもこいつも色気づきやがってよ、気色悪いったらねえや。」
先の戦では、実に多くのカップルが誕生したのだ。小生も屋根裏から拝ませていただいた。生命の危機に晒された男女が生殖本能に目覚めるというのも、あながち嘘ではないようだ。
「そこなんですよ、シノンさん!」
前を、腕を組んで通り過ぎた聖職者と覚しき男女に一瞥を投げ、寝転んだ長髪の男に訴えた。
「オレ、めっちゃ身体張ったと思うんすよね、手前味噌だけど、もう、大活躍だったと思ってるんす。」
「まあ、否定はしないよ?皆の盾だったよ、おまえ。」
「っしょ?…なのに、なんで?」
「はあ?」
「だから!何で身体張ったオレじゃなく!女の子はキルロイとか、ツイハークみたいな優男に行くの?」
「そりゃあお前、女はそういうの、好きだろうさ。」
「おう、あいつらならまだわかる、さらに!…あれは何だ!」
ガトリーの指差した向こうには、なにやら不釣り合いなつがいが歩いてゆく。
「マカロフ!あいつだけは許せん!あの、ステラさんが何故…」
「あれはまあ、例外だ、ニッチな需要ってやつだ。」
「ギニャアッ」
危ない危ない。ドン!地面につきささった酒瓶。危うく当たるところだった。
「じゃあボーレは?オレと同じタイプじゃね?ってか殆ど変わんなくない?」
「ハートが違うのよハートが、あと、お前、ガッツきすぎ。」
「あーあ、シノンさぁん、オレ、一生童貞のままなんすかね〜。」
「え、何、お前、マジで!?」
長髪の男は、腹を抱えて笑い始めた。うーむ、気の毒な話だというのに。小生もひとり寝が淋しい夜はある。下世話な言い方をすると、つまり発情期だ。
「わ、酷え、悪いっすか!あーあ、言うんじゃなかった。」
「ひー、ああ、悪い悪い、あれだ、紹介してやるよ、何だったらオレが、相手してやってもいいぜ。」
悪い冗談、まだからかい足りないとみえる。
「あー、もうそれでもいいや、あれ?なんかシノンさんが女に見えてきた…。」
ゴツい男は、長髪をまじまじと見つめる。目が座っている。膝立ちにすり寄る。小生、さっと膝から降りる。
「お、おい、冗談だよ、よせ、な?笑って悪かったよ、謝る!ごめん、な?」
ガトリーは、長髪を木の幹まで追い詰めた。今や、いわゆる、壁ドン状態である。
「衆道は武士のたしなみって言うし…シノンさん、オレ達、新たな世界に旅立ちましょう。」
「言わねえっ!…おい、誰か、そこの、…アイク!団長!オレのバックバージンが危ない、助けろっ!」
そこにたまたま通りかかった蒼い髪の青年、今や誰もが知っている、蒼炎の勇者アイク、一番の戦功功労者だ。両手に骨付き肉を5本も握っていなければ、さぞや様になるであろうに違いない。
「シノンさあん。」
「おい!早く…、アイク!」
「…邪魔したな。」
小生の横を、ふっとマントが翻った。
「…おいコラ!てめえ、団長だろ?…あ、今ちょっと笑ったろ、おい、行くな…助けろ〜〜〜!」
「行っくよ〜、シノンさあん。」

……。ここから先を、見たくはない。魚をもう一匹頂戴して、次に行くことにする。

(おわり)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ