※更新再開しました!!


パラレル。殺し屋四月一日とマフィア百目鬼の話。


マフィアの世界を分かっていないくせに書いちまった的な話。
色々拙い箇所が多々あると思いますが、バッチコーイな方のみお進みください。



***








■薔薇の男■


46.ひとり

一枚のメモだけを頼りに異国の地を歩くのは容易ではなかった。
皆同じ顔に見えてならない東洋人の群れ。
当然言葉も通じない。
話には訊いていたが、訊くと見るとではまた全然違った世界。
世界の中でもトップクラスの治安の良さを誇る、日本だ。

“男”は、手の中のメモにもう一度視線を落とした。
ローマ字で表記されたメモには、あるホテルの住所と名前が書かれているだけ。
そこへ行くための地図も、説明もない。

それも当たり前だ。
このメモは、報告書から盗み見て写したものなのだから。

男は勘だけを頼りにここまで来た。
それが合っているのかいないのかは判らない。
一応標識で確認するものの、それから先をどう歩けばいいのか全く検討が付かなかった。

しかし、矢張り自分の勘は当たっていたとうなずくことが出来た。

左斜め数メートル先。
黒髪の、見知った少年達の姿を確認したからだ。

男はコートで顔を隠し、足早に少年達の横を通り過ぎる。
少年の一人が振り向いた気もしたが、気にせずやり過ごした。
気にすれば逆に気付かれてしまうからである。

少年達は、本来日本にいるべき理由がない。
そもそも長期で中国に渡っているはずなのだ。

それを無理に断って、“ある人物”を彼ら自らの足で捜し始めた。
その人物は同時に男の捜している人物でもあったのだが。

報告はあった。
捜している人物が日本にいることも。
少年達が発見したことも。
そして、“ある男”と一緒にいるらしいことも。

男は憎々しげに表情を歪め、小さく舌打ちをした。
厭なことを、思い出してしまった。
どうも最近よく思い出してしまう、と。

気を取り直すように、男は顔を上げて歩き出す。
少年達が特に何の荷物もなくうろついていたということは、この近辺にメモに書かれた目的地があるのだろう。
男は、注意深く辺りを見渡しながら歩いた。

そして、視線はしっかりと捉えた。
捜していた人物を。
会いたかったその姿を。

男は駆け出した。
“彼”を…愛するあの少年を抱き締めるために。

腕を伸ばす。
もう少しでこの腕の中に少年を抱くことが出来る。
嬉しさで、泪が出そうになった。

けれど現実はいつでも簡単に悪夢を見せる。

少年の哀しげな視線の先。
溢れそうな感情を堪えるように見詰める少年の、ほんの数メートル先。

判ってしまった。
その一瞬で。

──ここに来るまで疑問だらけだった。

何故、少年はミスを犯したのか。
何故、少年は連絡を寄こさないのか。
何故、少年は姿を消したのか。
何故、少年は“あの男”のそばにいるのか。

その答えが目の前にある。
最悪の形と最悪の意味をもって、目の前に。

男の愛する少年・四月一日は、殺すはずだった男・百目鬼を、愛してしまったのだ。

男は呆然と立ち尽くした後、拳をきつく握り締めた。
今男を動かす力があるとすれば、それは怒り。
深く、暗い、闇の怒り。



(殺してやる…)



憎しみのこもった紅い瞳で、男は誓う。



(お前は、俺が殺してやる…)



男は、暗くなりかけた空に誓ったのだ。



【続】






[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ