□日記
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弾は節約しなければならない。だから、クリスはレベッカのところから出てすぐに、薄暗い廊下をリョーマの手を引きながら全力疾走した。


まだ、奴らの三人が階段近くに陣取っていた。クリスとリョーマはやすやすと彼らをやり過ごし、廊下を走りぬけて角をまがった。他の廊下へと戻るドアにたどり着くと、くるりと振り向き、古典的な射撃手の姿勢をとり、銃を握っている手の手首を片手で支え、引き金に指をかけた。


一人ずつ、ゾンビがうめき声をあげながら、よたよたと角をまがって来る。クリスは慎重に狙いを定め、呼吸を整え、照準を保ち……。


引き金をしぼり、先頭にいるゾンビの腐った鼻柱に二発お見舞いした。間髪をいれず、三発目を次のゾンビの額のど真ん中に命中させた。奴らの背後の壁に柔らかいものがベチャッと散らばった。


「やるじゃん」


「まあな」


クリスは得意げにベレッタをさげた。彼は射撃の名手なのだ。その腕の確かさは賞を何度も取って実証済みだ――が、じっくりと標的を狙う時間があれば、もっと見事に射ぬいてみせることができる。早撃ちはさほど得意ではない。それはバリーの十八番だ……。


クリスは、すべてはこいつにかかっているという思いにかられながら、ドアの取っ手に手を伸ばした。アルファチームは自分のことは自分で面倒をみられるだろう。彼らはクリスと同じようにチャンスはある――が、これはレベッカの初めての任務であり、リョーマは一般市民。二人には銃さえない。クリスが二人をここから脱出させてやらなければならない。


クリスとリョーマは、緑色のカーペットの敷かれた廊下の柔らかい明かりのもとに戻った。素早く左右を調べる。まっすぐ先の回路は漆黒の闇と化している。安全かどうか知る術はない。




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