かきもの
□きみのなまえ
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ずっと見てきた。
ずっと守ってきた。
背中。
笑顔。
大きな花火の島と、広がる碧の海の島で。
気持ちを確かめた。
想いは、一緒だった。
おれは、間違ってなかった。
おれたちは間違ってはいなかった。
大好きな人を守る。
一緒だった。
だけど。
もう
時間が、無かった。
背中。
痛みはやがて肉を食み抑えを凌駕し始めた。
おれの意思だけじゃどうにもならないところまで、侵食が進んでしまった。
これ以上抑え続けては、きっともう一人のおれの戦う力自体を殺してしまう。
おれは、どうなってもいい。
この心が必要ならいつだって捧げられる。
だから、もう一人のおれだけは。
おれがくるしめ続けたもう一人のおれだけは、助けてください。
彼には生きる権利があるから。
みんながおれたちを助けようとしてくれた。うれしかった。
だから、手遅れになるまえに、おれがやらなきゃいけない。
大好きなふたりを、おれがしあわせにできるやりかたは、これしかないから。
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『ゆいごん』
大好きなもう一人のおれへ。
やりかたはわかっていました。
おれがいけなかったんです。
わかっていたのに、いなくなることがやっぱり怖かったんです。
でも、もう大丈夫です。
気持ちはわかりました。
通じあっていました。
ゆだねても良いのだとわかりました。
ごめんなさい。
長い間、苦しめてごめんなさい。
いなくなります。
おれはただのちからになります。
おれがそうと決めれば、あとはきっとせんせいがうまくやってくれます。
もう痛みはありません。
いつもよりずっと強く戦うことだって出来ます。
だから、どうか許してください。
戦う事をあきらめたおれを許してください。
今はわからなくても、おれの選択は間違ってないっていつかきっとわかるから。
だから。
ザックを頼みます。
大好きなザックを、しあわせにしてください。
さようなら。
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『きみのなまえ』
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