かきもの

□白き河の祈り
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『白き河の祈り』


ある日のザックの日記より



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・・・・・・

星波の島で、俺はとんでもない約束をしてしまった。



今思えば、ノリノリだったから、としか答えられない。
だけど、あの島でリアムが俺に与えてくれたものは、その約束程度じゃとても埋め合わせられない。

俺の命と、永遠の約束。
そのご褒美の埋め合わせには、安すぎるものだ。

それに、いつかは、という気持ちがない訳じゃない。

次の旅行先で俺が女の子になると、リアムと約束した。

ちゃんと話してはいないけど、つまりは女の子の身体でリアムを受け入れる事もあるだろう。

リアムがご機嫌で任務に出たのは、今回の任務をこなせば茶熊学園の夏休みに合わせて騎士の職務でも休みが取れそうだからに違いなかった。

次の旅行先はアオイの島に決めた。

夏には天の川がかかり、年に一度、その時だけ遠く離ればなれの天に住まう恋人達が会う事ができる、なんて言い伝えがアオイの島にはあるらしく。
天の川が空にかかる間に、祭を毎年開くそうだ。

俺は以前にアオイの島の騒動の際に赤髪やアイリス達と一緒に行ったことがあって、その時に仲間に加わったコジローやセオリ達からその言い伝えを聞いて以来、また夏に旅行に行きたいと考えていた。

リアムに夏休みにアオイの島に旅行に行きたいと相談したら、快く了解してくれた。
なんでも、アオイの島はライスワインの名産地で、酒好きも一度は行くべき島なのだと教えてくれた。

俺はライスワインはあまり得意じゃないから、そのありがたみはわからないけど。

リアムはそれから夏に長期休暇を取るべく休みを返上して騎士の任務に専念した。

その甲斐があってか、十日間ではあるが、リアムは祭のタイミングに合わせてまとまった休みを取ることができた。

リアムは騎士としてはかなり信頼の高い人物なんだって。
実力もさることながら、受けた任務をキチンとこなしきるのはそうそうないんだそうだ。
リアムの部隊はそれが出来る。討伐も、防衛も、調査も。
大事な品物を傷無く運ばなければならない運搬の任務を任されるのだから、リアムの仕事ぶりは凄いと弟のウィルが話してくれた。

俺が知ってるリアムは、酒好きの食いしん坊で、喧嘩早くて、泣き虫で。
エッチで。
ヘンタイで。
俺を守ってくれる、強くて優しいリアムだ。



今日の昼頃、リアムは任務先から帰ってくる。
雑務を済ませて家に戻るのは夜になるだろう。


今日の夕飯は、リアムが大好きなローストビーフ。

ローストビーフは塩釜で焼き付けを済ませて、余熱でじっくりと馴染ませてある。
ソースもポン酢にグレービーソース、塩、薬味も準備万端だ。

副菜は根菜のガルニと、トマトのサラダに、コーンスープ。
デザートは蜜漬けリンゴを焼いて、バニラアイスと一緒に出してあげよう。

リアムが大好きなモノを美味しく食べてくれるのが、俺は一番うれしい。

お風呂も沸かして、ベッドメイクも終わらせた。

後は、リアムが帰ってくるのを待つだけ。

こうやって、リアムを待つのはとても不安だけど。

帰ってきてくれると信じているから、大丈夫だ。



俺はもう大丈夫。
リアムを信じてる。

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