かきもの

□深淵の底
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『ある童話』


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ある冬の吹雪が続く時でした。



狩人が傷付き倒れた時、兎が出来ることは何もありませんでした。

いつも狩人に尽くす兎が責められることはありませんでした。



狩人は兎を愛していました。

兎もまた、狩人を愛していました。



兎がいなければ、狩人は森で狩りを出来ず、動物たちは心ないハンターの餌食になっていました。

皆、兎がいたから、森で平和に暮らせていたのです。

兎が狩人のそばにいて勇気付け、支えてあげることが何よりの薬になると知っていたからです。

みんな、兎が狩人に一番忠誠を捧げていたことを知っていました。

だから、兎を責めるものは森にはいませんでした。



けれど、兎には耐えられませんでした。
自分が無力で何も出来ないこと。皆が自分を責めないことが、兎には耐えられませんでした。


兎は狩人に出来ることを探しました。

何もありませんでした。



狩人はやがて今にも息絶えそうに弱りきりました。


もう、時間は残されていませんでした。










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『深淵の底』
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