かきもの

□白き河の祈り
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『旅行の前の日』

ザックの日記より

朝、リアムが旅行で入り用な物を買いに行くと言ってくれたので、俺はリアムに買い物を頼んでカティアさんの診療所に向かう事にした。

カティアさんには、頼んでいることがたくさんある。

リアムと俺の事を知りながら、協力してくれる人だ。
カティアさんがいなかったら、俺達はとっくにくたばっていたかもしれない。

カティアさんの診療所で、俺は診察を受けた。
俺がリアムとした約束を果たすにあたって、俺がやらなきゃいけないことをするためと、リアムの薬を受け取りに行くためだ。

罪の教団でリアムは背中に紋章を背負った。それ以外にも、リアムは教団のいた時に文字通りの改造を受けた。
リアムが常人ならざる膂力を得た反面、様々なハンディキャップを与えられたのだ。

リアムはソウルを自分で作る能力がほとんどないらしい。
ごく普通の生活をするには何の問題もないが、戦いに身を置くリアムにとっては死活問題で。
ソウル不足に苦しむ肉体が激痛を発する事もしばしばだった。



幸い、俺は人よりソウルを作る力も内包量も多かったらしく、カティアさんの技術で俺のソウルを薬化してリアムに与えることで、リアムのハンディキャップはカバー出来るようになった。

だからこうして旅行や任務でリアムが飛行島を離れる際は、不測の事態に備えて鎮痛剤と俺のソウルを薬化したものを用意してもらっている。

そして、もう一つ、俺がやること。それは・・・

・・・・・・・・・
・・・・・
・・・



「これで良いわ。ザック、おつかれさま」

カティアはザックの腕に刺していた注射針を抜いた。
それから消毒液を含ませた絆創膏で傷口を塞いだ。

「ありがとう、・・・なのかな」

ザックは今夜から明日の朝にかけて自分の身に起こることを想像しながら溜め息を吐いた。

「女の子か・・・」

「念のために、すぐに男の子に戻る薬も処方しておくから。体調が優れなくなったら飲みなさいよ?」

「あの、カティアさん。俺、明日には女の子になるんですよね・・・」

「そうよ?」

首を触ってそわそわしているザックを見ながら、カティアは続ける。

「だから、今日はしちゃだめよ。今日は男。明日は女の子。その気持ちをしっかり持って休みなさいね」

「リアムが許してくれるかな」

「大丈夫よ、昨日診察を受けに来たときに釘を刺したから」

リアムのザックに対する底無しの性欲はカティアも知っている。

だから忠告した。ザックを男でも女でも無い肉の異形にしたければ抱け、と。
実は怖がりのリアムは強がってはいたが、おそらく今日はザックに手は出さないだろう。

「カティアさん、聞いても良いですか。どうして、俺達を助けてくれるんですか?」

カティアはザックの問いに眉をひそめる。

「ぁ、すみません・・・」

ザックはいつもこうだ。いつも自分を下げる。自分の魅力に気がついていないのだ。

「ザック、駄目よ。貴方はもっと自分に自信を持ちなさい?」

「でも、俺は・・・」

カティアはザックの唇に指を押し付けた。

「貴方はわかっていないかもしれないけど、貴方に救われている者はたくさんいるの。私もその一人。だから、私はあなたを助けるの」

「俺が、カティアさんを・・・」

ザックは首をひねって、うう、と唸った。

「そうかな」

「わからなくていいわよ。ほら、明日出発するんでしょ?ゆっくりしていて良いの?」

「そうだった!ありがとうカティアさん!」

ザックはカティアの出した紅茶をぐいっと飲み干すと、慌てて診察室を飛び出して行った。



・・・・・・・・・
・・・・・
・・・


カティアさんは俺達に助けられていると言う。
でも、俺に何が出来ているんだろう。

助けてもらっているのは、俺達の方なのに。
俺は何もしていない。出来てない。

リアムがいたから、俺だって・・・

買い物から戻ったリアムと一緒に準備をしながら、俺はずっとその事が頭から離れなかった。

夕食を食べ終わった後、リビングでメンズナイツを読んで寛ぐリアムに聞いてみた。

俺に何が出来ているんだろうって。

リアムは何も言わずに、俺を抱きしめてくれた。

リアムの身体。あたたかくて、広くて、とっても心地好くて、頭を撫でられると安心してしまう。

そして、それでいいんだ、って答えた。
感謝を当然にしたら、オシマイだ、と。

リアムの翡翠の瞳が優しく俺を見つめてくれたのが、胸に焼き付いてる。

カティアさんの言葉も、リアムの言葉もまるでナゾナゾみたいでちんぷんかんぷんだ。

良くわからないよ、と俺が問い返すとリアムは俺の額にキスしてくれた。

ザックはバカでいい、って。

・・・失礼しちゃうな、まったくもう。



・・・・・・・・・
・・・・・
・・・



ザックは日記帳を閉じた。

寝室から、リアムが呼ぶ声が聞こえる。

「ハニー、早くおいで」

「今行くから」

冷蔵庫から水差しを持って、ザックは寝室に向かう。

リアムは寝間着に着替えて、既に布団をかぶっている。

「お水、いらないの?」

「汗かかないしな」

ちら、と毛布から顔を出して、リアムはザックを見ている。

「それより、ほら。早くこっち来なさい」

「はいはい」

ザックは水差しをサイドボードに置くとリアムの隣に身体をすべりこませた。

「ん、悪くねぇな」

リアムはザックをギュッと抱きしめ、額にキスをした。

「苦しいんだけど?」

ザックはリアムの身体を引き剥がそうともがくが、リアムはがっちりとザックを抱きしめて離さない。

「なんだよ。セックスできないんだからハグくらいしたって良いじゃねぇか」

「モノには限度があるだろ!」

「いいにおい」

リアムはザックの首に顔をスリスリする。

「な、止めろよ!勃てるな!!」

ピッタリ寄せた身体に固いモノが当たって、ザックはぎょっとした。

「な、ハニー。いいだろ、ギュッとしてくれや、ギュッと」

リアムはザックの腰にスリスリと腰をすりつける。

ザックは眉を吊り上げてリアムを睨んだ。

「おう、いいぜ。ギュッとしたる、ギュッと締めたんよ」

ガラの悪いリアムの口調を真似しながら、ザックはワザと爪を立ててリアムのモノを掴んだ。

「い、痛い!・・・や、でも、これはこれで、ハニー、もっと」

爪を立てられた後に幹を掴まれ、ザックの指が与える痛みと快楽に興奮してリアムはザックの手を握る。

リアムの自分との快楽を得ようとする執着心にザックはぎょっとした。

「キ、キモい!離れろ!」

ぐい、と本気で押し退けられて、リアムはやむなく力を弱めた。

「まったくもう。寝られなくなっちゃうだろ」

ザックは寝間着を整える。

リアムは本気でおかんむりなザックに気が付き、小さく咳払いをした。

「あー、その。大丈夫か」

リアムはザックの首の下に腕を伸ばした。

「何が?」

ザックはリアムの意図に気が付いて、頭を上げた。
腕枕をしてくれるリアムの気持ちを受け取る事にする。

「その、だな。ザックに、その。女の子になってもらうだなにあたって・・・」

「こわいよ。身体が変わるんだし。リアムの言葉もおかしいしさ?」

ザックはリアムの胸に顔を寄せた。

「でも、守ってくれるんだろ?」

「ああ。勿論。ザックは俺の嫁だ。誰にも触らせはしないよ」

リアムは大きなあくびをした。

「寝る」

「お休み、取れて良かったね」

「ああ。人間、やればできるもんだな」

リアムはしみじみ呟いた。

「リアム、ずっと任務に就いてたろ。疲れてない?」

ザックの蒼い瞳が、自分を見つめている。
リアムはその、夜明け前の蒼い輝きが大好きだった。

「大丈夫だ。いつも待たせてすまない」

情事に溺れない今なら、リアムは感謝を素直に伝えることが出来そうな気がした。

「ありがとう。ザックがいてくれるから、俺は戦える。ザックが待っていてくれるから、俺は生きられる」

「リアム・・・」

「ありがとう、ザック」

ザックは目を丸くして、身体を起こしてリアムを見つめた。
その目が見る間に涙を溜める。

「あ、ご、ごめん」

ザックは涙がリアムの胸にこぼれる前に慌てて涙を寝間着の袖で拭い、リアムに微笑みかけた。

「リアムにお礼言われるなんてビックリだよ」

「おいおい、ハニー。それじゃまるで俺が冷血漢だって言いたいのかい?」

ザックは首を振って、今日のカティアの言葉が何となく理解できた。

「ありがと、リアム」

ザックはリアムにご褒美をあげようと思い、彼の上に跨がった。

「ハニー?今日は・・・」

ザックは赤面した顔をそっぽに向けながら、ぼそぼそと答える。

「俺はダメだけど、リアムを気持ち良くしてあげるのはセーフだろ?」

「ハニー・・・」

「嫌なら、止めとくけど・・・」

リアムはザックの手を取った。

「口で、頼む」

ザックは頷くと、あ、と呟きながらリアムの上から一旦離れた。

「へへ。リアム、お布団」

「ああ」

リアムは頷いて、布団を脇に押しやった。

ザックは大の字に横たわるリアムの膝の間に入ると、彼のパンツを脱がせた。

「リアムの、大好き・・・」

思わず本音が口を付いたが、ザックは照れたりする素振りを見せなかった。

「ふぅ・・・」

自分の手の中で屹立して、先走りの蜜をにじませるリアムのモノ。

初めは他人の性器がグロテスクで、何と体臭を放つ如何わしいモノなんだろうと思っていたが。

コレが毎日。時に昼夜を問わず何度も自分を串刺しにして、快楽のトリコにするのだ。

いつしかザックはリアムのモノが自分のモノよりも愛おしく感じるようになっていた。

ちろ。とリアムのモノに舌を伸ばして先走りをすくい取る。

「ん・・・」

いつもと同じ、塩辛い。

ザックはこくりと蜜を飲み込むと、リアムのモノを口に含んだ。
舌の腹を使ってリアムの先端を舐めると、リアムの口から呻くような声が漏れた。

リアムが感じてくれる。

ザックにはそれが嬉しくてたまらない。

ザックの動きは自然と速く、深いものへと変わっていく。

「ぁあ・・・ザック・・・」

リアムは身体を起こすと、ザックの頭に手を伸ばし、指で彼の耳の後ろを撫でた。

「んぅ・・・」

ザックはリアムのモノを咥えたまま、上目使いにリアムを見上げた。

「イイぜ・・・」

ザックはリアムの与える快楽のトリコになって。
もう、口に出されてもそれを飲むのも苦では無くなった。
もっと、リアムを気持ち良くしたい。気持ち良くなって欲しい。

「ふ・・・ん、ちゅぱ・・・・・・ぁ・・・」

プルン、とザックの口からリアムのモノが離れて、ザックは蕩けた瞳でリアムを見やる。

「ご主人さま・・・?」

「イカせてくれ、ザック」

リアムはザックの頭を抱えた。

「はむ・・・」

ザックはこくん、と首を縦に振り、口を開きゆっくりとリアムのモノを口にする。

「ッ・・・ァア・・・」

喉の奥までピッタリと飲み込むと、強くモノを吸われる快感にリアムは声を震わせた。

ザックから思わぬご馳走を与えられて、リアムはすぐに満腹になった。

「も、ぅ・・・出る・・・」

ザックは深くリアムのモノを咥えてえずきそうになるのを堪えながら、リアムをイカせてしまおうと首を振る。

ジュプジュプと唇が音を立てて、リアムのモノを擦る。

口の中でグウッとリアムのモノが太さと熱を増し、ザックはリアムが果てそうになっているのだと理解した。

「ァ・・・ッ!・・・」

ザックが口の中に広がった蜜を吸おうと唇をすぼませた瞬間、リアムは達した。
ザックの頭を強く引き寄せ、思い出した様に腰をザックの喉へと打ちつける。

「ん、ン!ぅン・・・」

舌の上から、喉の奥まで。
リアムの精液は広がりザックの口内も心も満たしていった。

「ハァ、ハァ・・・わ、悪ィ・・・抑えられなかった・・・」

ザックの頭を抱えたまま、リアムは息を乱しながら答える。

「フぅ・・・」

ザックは鼻で苦し気に呼吸をしながら、リアムの頂きが収まるのを待った。

「ハニー・・・」

リアムはそっと腰を引いた。

「ん・・・」

ザックは頭を上げると、口に溜まったリアムの精液を何回かに分けて飲み込んでいく。

トロトロで、粘っこくて。青臭くて、塩辛い。飲み込みにくくて、ひどい味だ。
コレを嬉々としてご馳走の様に口にするのはリアムしか知らない。

だけど・・・

飲み終わった後、とても幸せな気持ちになってしまうのだ。また、飲んでも良いやと思ってしまう。

「あぁ、ザック。無理はしないでくれ」

「へへ。・・・不味い」

ザックはニンマリと笑顔を浮かべた。

「でも、幸せだ」

リアムは指先でザックの唇を拭ってから、ザックを抱き締めた。

「まだ、足りない?」

ザックの問いに、リアムは首を振る。

「歯止めが効かなくなりそうだ・・・」

「そっか。じゃ、もう休もうか」

ザックは半泣きの表情を浮かべるリアムの頭を撫でた。

「どうしたの、あまえんぼさん?」

「いや・・・」

これから二人が眠りについて、翌朝目を覚ましたら。
ザックは女の子になっているのだ。

なってくれるのだ。

その責任の重さを、リアムは噛み締めている。

「水」

ハイハイと頷きながら差し出される水差しから水をがぶ飲みして、リアムはゴロンとベッドに横になった。

「脱ぎっぱ。パンツくらい穿けよ」

ザックはリアムにパンツを渡すと、水差しの水を一口飲んで、喉を潤した。

「ザック」

リアムは言い付け通りにパンツを穿いて、腕をザックに伸ばした。

「ん」

ザックはリアムの腕を枕にして横になると、目を閉じた。

「ハニー」

リアムの声が、耳元で優しく響く。

「愛してるよ」

ザックは無言でリアムの身体に身体を寄せて抱きしめながら、眠りについた。

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