お題夢
□暖かさ
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「あ、雪だ」
名前は足早に駅の方へと駆け出す。
天気予報ではまだまだ先の初雪のはずだったのだがパラパラと降っていた雨がいつの間にか冷たい空気に冷やされて雪に変わっている。
「やぁ、名前」
「あ!隼〜!よかった」
「待たせたかな?」
「ううん!今来たよ!……って隼いつの間に電車に乗れるようになったの!?」
駅の自動改札を使いこなしている隼を見て名前は驚く。
今までだったら待ち合わせは駅では隼が電車に乗ることが出来ないということで名前が隼を迎えに行っていたのだ。
「やだなぁ、僕だって成長くらいするよ?可愛い彼女からのお迎えを待つのも悪くないけど、迎えに来てもらってばっかりだと僕が嫌なんだ」
フフと笑ってさぁ行こうかと名前の手をとって歩き出す。
「それにしても寒いね」
「雪降ってるからね。隼は雪が似合うよ」
「まぁ僕だからね」
「う、うん?」
どこに行くわけでもないけれど街中の賑やかな空気を横目に人気の少ない方へと歩いていく。
二人で出かける時はいつもこんな感じでゆっくりとすぎる時間を二人で過ごす。
しばらく歩いていると大きな公園に出た。
雪が降っているためか、寒いためか、人の気配はほとんど無い。
「やっぱり静かだね」
「そうだね。座ろうか」
「隼に公園のベンチってあんまり似合わないよね」
クスクスと笑いながら名前と隼は屋根のあるベンチに座る。
「なんか暖かいもの買ってくるね」
「うん、ありがとう」
それだけいうと隼は自販機の方に向かっていく。
「ふぃ〜、それにしても寒いなぁ」
シンシンと雪は止まることなく降っている。
二人出会う時は特別なことはしないでこうして散歩したりご飯を食べたりとしているために今日も公園に出掛けたのだがさすがに考えるべきだったかとため息をつく。
「わっ!」
ピトッとくっつけられたのは自販機で程よく温められている缶コーヒーだった。
犯人はもちろん隼。
「びっくりした?はい、コーヒーでよかったかな?」
「びっくりしたよ。ありがとう」
隼からコーヒーを受け取る。
「わっ!?」
開けようとプルタブに指をかけると名前の両頬に暖かい感触が伝わってきたのだ。
隼の手が名前の顔を包み込む。
「やっぱり、この時期に外出のお散歩は寒かったね。今度からどこか室内で会おうか」
少し困ったように名前の頬を暖めるように優しくなでる。
「隼が暖かいから大丈夫。寒くても隼が一緒にいてくれるでしょ?」
ヒヒといたずらっ子のような笑みを浮かべる名前。
それにつられたように、満足したように笑みを浮かべる隼。
「ならよかったよ。僕が普段こうやって外で出かけることがないって言ったから気を使ってくれてるのかと思ってさ」
「そんなことないよ、二人で入れることに意味があるんだから」
雪は振り続ける。2人はそんな中を二人だけの特別な時間を過ごす。
君の暖かさを知る