お題夢

□関係ない
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「いっくん」
「あ、名前さん!」
1人で基地の中を歩いていると名前に呼び止められる。
名前は第二艦隊の作戦部隊副隊長で色々とお世話になっている。
厳しい中にも優しさがあり、仲間思いで芯が強いという性格で信頼も厚い。
郁も慕っている中の1人だ。
そんな彼女は今日、少しだけ元気がないように見える。
「名前さん、元気ない?何かあったんですか?」
「実は上司に…ちょっとね」
言葉を言いかけた瞬間、ハッとしたような顔をしてはぐらかした。
名前は郁よりもずっと年上だ。
年下の郁たちには心配をかけまいとこんな時代、こんな世の中になっているのにもかかわらず笑顔を絶やさず決して弱音を吐くことはなかった。
「少し時間ありますか?」
「えっ?まぁ、今から明日の朝までは非番だから」
「じゃあ俺お茶入れるんで、話しましょう」
たまにはいいかもねと笑いながら郁についていく名前。


「はい、どうぞ。紅茶ですけど」
「ありがとう。いっくんってお茶淹れるの得意だったの?」
「夜さんに教えてもらいました」
「あー、夜くんこういうの好きそうだね。ご飯も美味しいし」
ふふっと笑いながら郁の淹れた紅茶をすする。
「美味しい、優しい味がする」
「優しいのは名前さんの方です」
え?と首をかしげる名前。郁は昔のことを話し始めた。
自分がこの第二艦隊に入ってきたときの話。


郁は涙と共にこの場所までやってきた。
これ、といって長けた才能はなかったけれど二人とも適合力は高かった。
けれどまだ子供。18歳にならなければ実戦投入はできない。
ここにやってきた当時は16歳だった二人にとって地獄でしかなかった。
特に涙は常に情緒不安定、それ加えて知らない人に囲まれるこの場所は郁が思うよりもずっと苦だと、それを少しでも支えてやりたいというのが郁の気持ちだった。
けれど自分だってまだまだ16の子供だ。
どれだけ精神を保てていたって不慣れなことが多すぎる。
そんな中、名前は郁に声をかけた。
「神無月くん、今大丈夫?」
「え…、あっはい」
「少しお話ししようかなって。お茶でも淹れるね」
少し強引に話を進め、郁を連れて行く名前。
郁ははてなマークを浮かべながらその後ろをついていく。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「一人で頑張らなくてもいいんだからね?」
あまりにも唐突すぎるその言葉に流石の郁もへ?っと素っ頓狂な声を出してしまった。
その顔を見てどこか安心するように名前は郁に笑って見せた。
「そうそう、まだ若いんだから。笑っててね。大丈夫よ、私たちが君たちを守ってあげるから」
ポンと郁の頭に手をなでる。
それがどれだけ郁の心に響いたか。
郁はそれから名前には弱音を見せたり相談ごとをするようになった。
いつからかそれは信頼よりも深い感情になっていた。


「あの時、名前さんは俺のこと子供だと思ってたかもしれませんけど…」
「え?」
すうっと息を吸って覚悟を決めたように郁は名前の手を握りしめ目を合わせる。
「俺は、名前さんを守ってみせます。子供とか、年下とかそんなことは関係ありません。あなたが好きです」

年の差なんて関係ない

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