お題夢

□世界を横目
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※駆が全力で病んでます
※幸せにはなりません


あの日、すべての戦いが終わった。


「人類は勝った。未知の戦艦生物に」
始の声が響くとやがて生き残った人類は歓声を上げる。
人々は喜び、泣き、抱き合い、生きてきたことをこれほどまで喜んだ日はないというくらいに喜びあった。
だが対価がなかったわけではなかった。
この世界で大事な人を失っていない人なんていない。
師走駆は1人、その場を後にした。


「俺不幸なのに、この日まで生き延びてこれたのはきっと始さんや恋とか、今まで一緒に戦ってきた仲間がいるからだよね」
そう呟きながらとある部屋へと入る。
「ねえ、名前。なんで寝てるのさ…起きて…終わったんだよ?全部」
横たわる人の数は無数。
戦局が悪くなるにつれ増えていく人の数。
部屋は冷たくて暗い。
だが人類にはそうするしかなかった。
「あの日…、俺がもっと早く…」
名前は特別な資格を持ってはいない。適合者としての力もなかったがために組織へは入っていなかった。
平凡に、静かに暮らしていた。
そんな街を戦艦は容赦なく牙を向け襲い掛かった。
力を持っていない人の集団なんて秒殺だった。
その情報を受け取るのがもう少し早かったら、もしかしたら名前は助かったのかもしれない。
「俺言ったじゃん、この日を二人で迎えて幸せになろうって…っ、それまでちゃんと…笑って待って…約束…したじゃん…」
きちんとした治療も受けていない、そんな人間が何日も部屋に放置されて生きているはずがない。
駆はそれでも必死に語りかける。
「ごめんね、痛かったでしょ?俺、弱いから、俺が不幸体質じゃなかったら守れてたよね?」
冷たくなった名前の体を抱き上げ外へと連れ出す。


本部の屋上。そこからは下で喜びあっている民衆の姿や、仲間の姿が見える。
「…みんな嬉しそうだよ、見て名前。これが全部終わった世界だよ」
日の光が名前の顔を照らす。
青白く、微かに血痕を残している顔。
「俺たちはずっと一緒だよ」


コノセカイトハココデオワリ。

幸福な世界を横目に

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