捧げもの

□その毒に満たされて
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「ねぇ、」

『何?』

「なんで?」

『何が?』




臨也の言いたいことはなんとなく分かる
恐らくは、何故私は臨也に振り向かないのか、ということだろう


別に嫌いな訳ではない
ただ恋愛対象として、臨也のことを考えたことがなかっただけである


客観的に見れば、確かに臨也みたいな眉目秀麗で頭も良く、運動も出来るという非の打ち所がないような人。惚れないという人の方が珍しいだろう
ただなぁ…




「名無しさんのこと、こんなに愛してるのに…」




嘘臭い
大いに嘘臭い。臨也のことは嫌いじゃない
嫌いじゃないが、これは酷いだろう。これが嘘ではなく真と言うのならば私はあまりの愛の重さに潰れそうだ




『臨也』

「名無しさん、俺の愛を受けとめt…」

『ウザい』




キッパリ言ってやった
今までは少しばかりオブラートに包んでいたが、これ以上は我慢の限界である
第一、イケメンと私が並んでみろ
殺されるぞ(私が)




「相変わらず名無しさんは酷いこと言うなぁ…もっとオブラートに包んで言ってほしいよ」




あれ?私オブラートに…まぁいいや




『臨也がウザいのはデフォだから別に構わないけど』

「酷いなぁ、でもそう言うとこも好きだよ」

『精神科、もしくは脳外科をオススメするよ』




苦笑いする臨也
苦笑い…って言うか、辛そうな、悲壮感に溢れたような
こっちが罪悪感に苛まれる
私は思ったことを言ったまでだが




「名無しさんが振り向いてくれないなら俺死ぬよ?」

『それは困る。数少ない友人がいなくなるのは辛い』

「じゃあ付き合っt…」

『無理』

「…」




それとこれとは話しが別だ
私にも選ぶ権利がある




「ねぇ名無しさん」

『ん?』

「俺と新羅、どっちが好き?」

『…』




固まった
えぇ固まりましたよ。だってね
普通このセリフってさぁ
女が言うもんじゃないの?


答えとしてはどっちもどっちだ
どちらも大切な友人に代わりはないから選べない
でもここで新羅を選ぶと(経験上)めんどくさいんだよなぁ




「俺のこと好き?」

『新羅よりは』

「俺も好き。じゃあ付き合おうか」

『何のじゃあなんだ』




迫り来る臨也の手から華麗に避ける
この動きも不本意ながら慣れたもんだ





『臨也さぁ』

「ん?」

『もう諦めたら?私のこと』

「なんで」

『なんでって、私好きにならないよ。多分』

「…」

『諦めた方が良いって』




クダラナイ
そんな顔している理由が私には分からない
だって普通はそうじゃないだろうか
もう何年かになる。その間、私は断り続けている。普通は諦めるはずだ。なのに…




「それは名無しさんが決めることじゃないよ」




なんで、諦めないんだろう




『私好きにならないよ?』

「まだ分からないでしょ」

『何年になると思ってんの?』

「さぁ」

『バカ一途過ぎるでしょ』

「名無しさんのことが好きだからね」

『もう、』




言葉も出てこない
この人間が何故私を好きなのか、本っっ当理解に苦しむ
私はどこからどう見ても平凡な人間のはず
臨也が気に入るような要素はどこにもないはずなのに…




「好きだよ、名無しさん。」




まるで遅効性の毒のようだ
長い期間をかけてじわじわと冒されていく感じ
自分でも認めたくない
だけど、このままいけば必ず私は臨也のことを…いや、そんなおぞましい事考えないようにしなければ
私は今この現状を崩したくはない
臨也には悪いかもしれないが、何気この関係を楽しんでいるのだ




『臨也、私好きにならないよ』

「だからそれは…」

『好きになんてなってあげない』




ニッコリと満面の笑みを臨也に向ける
例え臨也が毒であっても、私を冒すことは無理だろう
だって、きっと、もう…




「好きになんてなってあげない…か、」

『うん』

「そっか…ま、今はそれで十分かな」




臨也のことだ
私の気持ちには気付いているはず




『臨也』

「ん?」

『私のこと好きなら…私を惚れさせてみろ』

「もちろん、そのつもり」




2人して不敵に笑いあう


あぁ、やっぱり楽しい
もはや意地のようなものだが
絶対に好きになってやるもんか!






END

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