金髪で血色の瞳のあなた

□主君を守る
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side)鈴

(彩乃は何が何でも、絶対守ってみせる。
十五年前、彩乃とあたしと麗奈、三人で暮らし始めた時、一番困った事は、生活費だった。私と麗奈は、貯金をしていたが、三カ月も、四ヶ月も食べていけるほどの、額ではなかった。
そして、もう一つ。彩乃の事だった。
十五年前の彩乃は2歳。まだ結婚なんて歳じゃないけど、彩乃が十六、十七歳になった時、彩乃には、身の危険が迫る。
鬼の中でも、女鬼は少ない。まして、純血の鬼だとしたら、なおさらだ。
そこで、男鬼は、跡継ぎを残すため、女鬼を探す。普通は、男鬼が、女鬼が住んでいる里まで出向き、そこでお見合いをする。
だが、里に住んでない女鬼の場合、問答無用で、男鬼に連れ去られ、男鬼の花嫁になってしまう。
男鬼が悪い訳ではないが、このまま彩乃を普通に育てていくと、もし、彩乃が生き残っているとばれた場合男鬼に連れ去られてしまう。
特に気をつけなければならないのは、風間家だ。風間家は、西で一番血筋の良い鬼の一族だ。風間家は昔から、東で、一番血筋の良い雪村家の鬼と結婚するのだが、雪村家は、翡翠家と同じ様に、2年ほど前、滅ぼされてまったのだ。聞くところによると、雪村家の一番血筋が良い双子の兄妹の雪村薫、雪村千鶴は、生き別れになったそうだが、生きているらしい。だが、消息は不明だ。
雪村と同じ位の純血の鬼の一族は、翡翠家しかいない。だが、翡翠家も滅びてしまった、となると、風間家は雪村千鶴か翡翠彩乃のどちらかを探しに行かねばならない。なぜなら、風間家と同じ位の純血の鬼の一族で、女鬼がいるのは、雪村家と、翡翠家しか居ないからだ。恐らく、風間家は、雪村千鶴を優先するはず。風間家と雪村家は昔から婚姻をむすぶというしきたりがあるからだ。
鬼はしきたりを重んじる。
ましては、鬼の中でも、しきたりや純血にこだわる風間家なら、なおさらだろう。
現在の風間家の頭領は、風間千景、という、男鬼だ。ならば、妻探しが始まるのも、時間の問題だろう。
もし、雪村千鶴が見つからなかった場合、次に狙われるのは、彩乃だ。
だが、私と麗奈は、彩乃を渡すつもりはない。
もし、風間千景が現れた場合、私と麗奈がそばにいるとは限らない。そのときのために!身を守る必要がある。
この二つの悩みを一気に解決する為、一番手っ取り早い方法はなにか、あたしなりに考えた結果、くノ一という答えが出た。
この考えを麗奈に言ったら、真っ先に反対された。それもそうだろう。命を落とす危険性がある。だが、一回任務に成功したら、半年は食べてけるし、自然に、護身術なども身につく。何より、くノ一になるまでは、訓練所で、寝泊りさせてもらえるし、ご飯だって出る。この利点を必死に麗奈に伝えた所、麗奈が珍しく折れて、あたしの意見が通った。多分、麗奈も自分なりに考えて、利点を見つけたのだろう。
そうしてあたし達は十二年間厳しい稽古を耐え抜き、晴れて三人ともくノ一になれた。彩乃はもう十七歳。年頃だ。多分普通の男鬼だったら、簡単に倒してしまうだろう。風間千景は相当強いらしいが、自分の身くらいは、守れるだろう。
それに彩乃は過去の悲しみから立ち直り、今は楽しそうに暮らしている。
それが本当にうれしい。)

彩)「鈴!早くしないと、みたらし団子なくなっちゃうよー」

鈴)「今行くー」

(彩乃は誰にも渡さない。人間として、平穏な日々をすごしてほしい。
彩乃は自分が鬼だと知らない。
だが、もし、風間があたし達の目の前に現れた場合言わざるを得ないだろう。でも、風間が現れなかった場合、彩乃には、鬼の存在のことを教えるつもりはない。永遠に。)
)
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