金髪で血色の瞳のあなた

□主君を守る
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麗奈side)

(私が彩乃を守らなきゃ。十五年前私は
心に誓った。何があっても私が彩乃を守ると。十五年前。人間が翡翠家の里を滅ぼしにきた。理由はただ一つ。鬼の力を恐れたからだ。軽い擦り傷程度なら、瞬時に治し、人とは並外れた力を持つ存在。それが鬼だ。
我が主君である翡翠家は、鬼の中でも一位、二位を争う、純血の鬼の一族だ。そして、我が一族、瑠璃家も翡翠家や、風間家まで、血は濃くないが、純血の鬼の一族だ。
翡翠家の主、翡翠拓磨は暴力癖があった。その暴力が原因で身体が弱かった彩乃な母。翡翠雫は命を落とした。
翡翠雫が亡くなった為、一時期は翡翠拓磨の暴力もやんだ。
だが、3カ月程過ぎると、今度は自分の娘、彩乃に暴力を振るい始めた。
最初は、軽く頭をはたくだけだったが、暴力行為はどんどん激しくなっていった。最初は頭を軽くはたくだけだったのに、握りこぶしで彩乃の頭を十回も二十回もぶつようになり、彩乃の身体には、無数の痣ができ始めていた。そんな時、人間が里を滅ぼしに来た。私はすぐに彩乃をさがした。
彩乃はすぐ見つかった。彩乃は大きな声をあげて泣いていた。彩乃の周りには、きっと、彩乃を守ったのであろう、家臣の亡骸が沢山あった。
だが、翡翠拓磨の姿はなかった。
自分の娘が炎に包まれた屋敷の中で泣いているのに、放っておける、拓磨の精神が全く分からなかった。
私は、わずかだけだが、翡翠拓磨を信じていた。
きっと、自分の娘が危険に侵されている状況ならば、翡翠拓磨は、自分の身体より、娘の事を優先するだろう、と。
だが、翡翠拓磨は、自分の娘、彩乃を見捨てて、一人だけ逃げたのだ。
翡翠拓磨が逃げたと分かった途端、これまで感じた事のない程の怒りを感じた。
そして、その時、誓ったのだ。
私が、彩乃を守る、と。
不謹慎な話だが、私は翡翠の里が滅びて良かったと思う。翡翠の里が、滅ぼていたかったら、多分彩乃は、今、此処に居ないだろう。
だから、私は人間に感謝している。
翡翠の里を滅ぼしてくれて、ありがとう、と。
私は翡翠拓磨を、許さない。誰がなんと言おうと。必ず見つけ出して、息の根を止めてやる。)

彩)「麗奈ー、早く宿探さないと、日が暮れちゃうよー!」

麗)「今行くわ。」

(あんなに無邪気な笑顔が見れるなんて、あの時は、思ってもいなかったわ。
彩乃を助け出してすぐ、私と彩乃は、翡翠家のもう一つの分家、緋色家の一人娘、鈴と、暮らし始めていた。
鈴と、私と、彩乃は小さい頃から一緒に遊んだり、翡翠拓磨が彩乃に暴力を振おうとした時に止めたりと、小さい頃から、ずっと一緒に居た仲だった為、一番信頼出来る相手だった。
彩乃は、目の前で次々と倒れていく仲間を目にして、悲しみのあまり、記憶をなくしていた。
私は、鈴と話し合った結果、彩乃には、鬼の存在や翡翠家の里が滅ぼされた事は、秘密にする事にした。
彩乃が人間として生きている時、もし鬼だとばれた場合に自分の身を守れるように、そして人間達の世界で生きていけるように、私達三人は、くノ一になる事にした。
こうして、今、現在に至る。
これからも、彩乃に鬼の存在を教えるつもりはない。)
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