Asteroid Of Continental
□MOVE ・1 ー北極ー
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司令部二階の窓からエントランスポーチの屋根に上がり込んで、キッドはドーム越しの星空を眺めていた。
仰向けに寝転んで、なんとなく両手を空に伸ばす。透明のあの丸いドームに触ってみたい。インテリアのスノードームを両手で包み込むようにだ。ドームに包まれているのは自分だけれど。もう何度もからかわれたが、それでもやっぱり、アステロイドのドーム建築によく似たこの眺めが好きだとしか言いようがない。
ドームの外はダイレクトに宇宙空間と言うわけではない。大気がある。ただし、マイナス二十度の世界。北のハートランド。数ヵ月前までは北の脱走者と呼ばれる者達が打倒AZ の機会を窺って身を潜めていた。その前はAZ 配下の軍港。
手持ち無沙汰に空を眺めていたがどうにも眠くなってきた。頭の中に何かメロディのようなものがかすめたが、そのまま消えた。飽きた。と言うか、とっくに飽きていた。ここでの生活に。
あくびをかましてめいっぱい口を開いた途端、けたたましくサイレンが響き、ほあ〜だか、あは〜だかわからない声を出してしまった。
透明なクリスタルドームに赤いV 字が浮かぶ。入り江を示し、やがてV 字が逆を向いた。
「やったぜ!帰って来やがった」
直径三キロほどのドームは、南に向いた天然の入り江までもその内に取り込んでいる。外洋と入り江の境、通常の港であれば防波堤がありそうなラインには頭上を覆っているクリスタルがそのまま海中に没し、海底まで続く城壁を成していた。
海に向かってぽっかりと口を開けたドームに入ってきたのは、紫縞クリスタルの高速輸送艇。倉庫群に近い第五桟橋に接岸しようとしているのを確認し、キッドは司令部前のホバースクーターに飛び乗った。