Asteroid Of Continental

□猫、帰る
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「頼むぜー見つかってくれよー、、、」

 浮遊大陸の一つ、デリテアの南端。中程がくびれた特徴のある半島から東岸沿いに飛ぶ。今は東岸、という意味だ。浮遊大陸であるから流れている間に回転もする。
 海岸間際まで緑が迫る、ジャングルと言って差し支えないほど木々が生い茂る地域を見下ろしつつ、ボウイは不安げにぼやいていた。

 AZ の件が片付いてから三ヶ月が過ぎようとしていた。直後にポンチョが持ち込んだのは AZ の隠し財宝がどうのと言う、とても乗れた話ではなかったが、J9 のメンバーはひとつだけ、この星での仕事を済ませていた。
 他の観測隊や探査隊と違って、最初からこの星の状況に疑念を持っていたラスプーチン機関が散り散りに追われた原因。すなわち裏切り者の始末だった。第8惑星の脱走者グループに依頼人は居た。ロウズマリー以外にもラスプーチン機関の生存者が居たのである。失速したニューブライスターの機上にあった二人のその後すら掴めず、AZ の動きも逼迫しており、依頼に取りかかる目処はつかなかったが、最悪の場合、自分一人ででも依頼を遂行するつもりでアイザックは受けていた。

 グイドやビトーらイースト・テラマータの者達が帰って行き、AZ の造った円環都市の第4円環であるソドムと、その内側を隔てている巨大な壁の打ち壊しがまず始まった。抵抗の姿勢を見せなかった非武装のマモン族たちは、もともと彼らの居住区であった第2円環の焼け落ちなかった部分をあてがわれ監視されている。
 マモンの一部勢力が籠城していた一角が陥落したのがつい一週間前。そしてアイザックが一人で追っていたラスプーチン機関の裏切り者の居所が判明して、始末をつけたのが一昨日である。

「心配しなくてもいつかは見つかるさ」

 今は敵もなく、シートをブラスターピットに上げる必要もない。初代のブライスターよりややコンパクトなコックピットで、キッドの声はのんびりしていた。

「知らない間にゴブリン隊に見つかって、解体なんかされちゃってたらどーするよ!俺ちゃんはそーゆー心配してんのっ」

「まーまー、焦るな焦るな」

 この星に来て早々、不時着の憂き目にあったニューブライスターの片割れの回収である。むろん回収そのものは光速母船であるブライガーを使うわけだが、不時着した近くにナルキネ族の小さな村があるとボウイは言う。彼らを脅かさぬように母船は洋上で待機しており、まずはキッドとボウイの二人が場所の特定のために出ていた。

 西のテラマータで合流を果たすまでの、キッドとボウイそれぞれの移動ルートを明確にする作業はなかなか困難を伴った。陸は移動し、まともな地図もなく、当人達が地理も地名も知らずに移動していたのだから当然である。
 しかし、その作業は実に楽しいパズルを埋めるように進められた。曖昧になりかけている部分も多い記憶を辿って、二人ともほんとうによく喋った。満点の星に仲間たちの声を聞いた幻も、流れる島々に人影を見て喉がつぶれるほど名前を叫んだ事も。すべて吐き出し、競うようにネタにして笑った。自分たちこそが心配されていた側だった事を、二人とも心得ていた。

「こんなに内陸だった気はしないんだけどな、、、もっかい岬から往復してみっか」

「あ、、まて、、出たぞ、集団の生体反応。これはニモルスの群れとは違うな。村じゃねえか?」

「おおーっ!見えたー!イール村!て、ことは、、こっちのほうに、、、居たーっっ!金属反応!」




 
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