題名未定 ハイキュー 黒バス
□小六
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二日前。
何の前触れもなく、父さんが死んだ。
信号無視をして猛スピードで横断歩道に突っ込んできたトラックから、普通に青信号で渡ろうとしていた小学生を守ったらしい。
その小学生は無傷。
父さんは即死。
タイヤに巻き込まれて、引き摺られて、内蔵飛び出るくらいぐちゃぐちゃになって、即死。
何なんだよ、ほんと。
かっこいいと思うけど、どうせなら父さんも生きててくれよ。
で、今現在葬儀前。
準備は親戚の人達が手伝ってくれたからすぐに終わった。
………それは良いんだけど。
誰が僕を引き取るか、という問題でかなりモメてるそうだ。
流石に小学六年生(もう少しすれば中学生)が一人暮らしってのは色々心配だけど。
別に施設でもいいし。
「天音」
「………あ」
縁側に腰を掛けてると、晴哉さんが声をかけてきた。
親戚の一人で、昔から兄弟のように仲良くしている人だ。
「これ、食うか?」
何処から持ってきたのか、手には塩煎餅。
「うん」
受け取り、一口かじる。
丁度良いしょっぱさに、ほんのり酸味と辛味……
「晴哉さん?これ、タバスコかけた?」
「バレたか」
悪戯っ子のように笑う。
「バレるに決まってるでしょーが。僕じゃなかったら怒り狂ってるかもよ?」
「そんなにかけたつもりはないけどなぁ」
これはこれで旨いけど、とは言わない。
晴哉さん、すぐ調子に乗るから。
「んで」
「ん?」
晴哉さんが話を切り出す。
いつもとは違った、真面目そうな顔で。
「お前は、天音はどうしたいんだ?」
「何を」
パリッともう一口。
「どこで暮らすか。あ、一人暮らしはナシだからな」
「あー、その話か」
うむぅ、どうするべきかな。
「一人暮らしってのは、考えてない。だって、まだ自分で生活費稼げるわけじゃないから」
「随分と現実的な小学生だな、オイ」
「そうかな。……ま、いいか。で、親戚達に迷惑をかけないと思うのが、孤児院とかの施設に入るって選択肢」
「孤児院?」
晴哉さんが、少し眉をひそめたように見えた。
「何かかなりモメてるらしいじゃん。誰が僕を引き取るか、って。そんなに嫌ならさー、施設にでも突っ込んどけばどーよ?」
わざと。
少し大きな声で、襖の向こうにも聞こえるように言う。
すると案の定、ざわめいていた向こうが静かになった。
「ついでに縁も切ってみる?問題夫婦の問題息子とおさらばできるよー?」
なーんてね。
父さんも母さんも(母さんの記憶はあまり無いけど)何か問題を抱えてる訳じゃないはずだけど。
自慢の夫婦だったけど(母さんの記憶はほぼ無いけど)。
「ほらどうよ、晴哉さん。他の親族達は僕の事お荷物だって。そりゃそーだ、今からお金かかるし」
「ストップ ザ アマネ」
「んお」
待て待て、と目の前で手を振られた。
「お前の思考、ブッ飛んでんな」
「?」
年相応じゃないとはよく言われるけど。
そこまで変かな。
「ん〜………」
晴哉さんが僕の頭から爪先までじろじろ見る。
それから、何かを思い付いたかのようにポンッと手を叩いた。
「ウチに来いよ」
「…………は」
ブッ飛んでんのはどっちだよ。
飛びすぎて宇宙まで行ったか。
「何で?理由を幾つか述べよ」
「試験か!……お前の兄ちゃんだから。かなり稼いでるから全く負担じゃないし。ついでに家事とかやってほしいし。何かあったら俺んとこでバイトさせよーかなーとか思ってるし。あと、そうだな……兎は寂しいと死ぬし」
「こんな巨大な兎がいてたまるか!」
でも施設とか他の親族ん所行くより良いだろ?と言い、頭を少し乱暴に撫でられる。
確かに、良いけど。
「異論は受け付けねーからな?」
ニヤリと含み笑いをする晴哉さんに、少し背筋が泡立った。