自覚なし

□七話
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「え、くの一教室に?」
「お願いっ!」

ある日の夕暮れ時裏山で剣術の稽古をしていると山本シナ先生がやって来た

「まあ、いいですけど…なんを教えればいいんですか?」

懸命に頭を下げてくるシナ先生のお願いを断れるはずもなく、その話を受けることにした

「実はね 方言を教えてほしいの」
「方言を?」
「ええ!」
「や、教えれるもんなら教えますけど、自分が話よう言葉が普通やと思っとるっちゃけん教えるんは難しいばい…」

困ったように言う七海にそれでもいいから!とお願いしてくるシナ先生
はあ…と息を吐いきながら頭をガシガシと掻く

「わかりましたよ。僕でいいんやったら教えます」
「ありがとう!七海先生!」
「内容は?」
「色術よ」
「……男を落とす方法ば教えれりゃいいんですね」
「お願いするわ!」











「はっはっは……歳ば離れとらんかったら今ごろあんさんらばくらしとるかもしれんなあ……」
『ごめんなさい…』

くの一教室に着いた途端、それはそれは大変な目にあった
勿論 罠に掛かるわけがないが、自分をからかおうとする事には苛々していた
もうないだろうと思っていたら いきなり痺れ粉と来たもんだ。咄嗟に避けたのはいいが、とうとう七海の怒りが爆発し、先程の会話に戻る

「ひとつ言っとくけどな、僕に色仕掛けは効かんぞ」
「え?」
「どうしてですか?」
「男って色に弱いんじゃ…」
「そういう勝手な思い込みはやめてくれんかなぁ?」

満面の笑みで言うとくの一の子達は一気に青ざめた

「色仕掛けでの注意は 仕掛ける相手の女に対する態度や」
「態度?」
「ああ。例えば……そこの君」
「え、私?」

近くにおった青髪の子を指差した

「君が男だったとしよう。それで 女に免疫がなかったとする」
「は、はあ…」
「女に免疫がないという事は?」
「……うまく話せない…?」
「という事は?」
「!情報が得られない!!」
「そうや!」

なかなか頭いい子らやん。一年は組とは大違いや……
てか予定になかった色仕掛けば教えるとは思わんかったわ

「ま、方言についてやけど 僕の話し方が訛っとるんは分かるやろ?
ここらへんに馴染んどるように見えてもな、どうしても言葉ってのは変えるんが難しいし、伝わりにくい。つまり…」
「方言はその国独特の言葉で 情報交換の時も方言を使えば聞かれても正確に知られる事はなかなか無い」
「そう」

博多弁だってな 話し言葉を全部博多弁で話したらほんとに何言うてるか分からんもん
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