自覚なし

□六話
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「やけんな ここの紐ばあっちに引っ掻けたら そっちのカラクリが作動して 侵入者を撃退するんよ」
「「なるほど…」」

土井先生との手合わせを終え、今は一年は組の兵太夫と三治郎にカラクリ作りをアドバイスしていた

「黒原先生もカラクリ作りするんですか?」
「ああ。実家は兄貴らが作ったカラクリだらけやったんよ」
「お兄さんが居るんですか?」
「おるよ。性格が正反対やけどね」

少し笑って見せると、2人は「もっと聞かせてください!」と七海に詰め寄り 目を輝かせていた

「ん〜…や、今日は止めとこう。話し出したら長うなるけんな」
「そうですかぁ…」
「残念」
「でも いつか聞かしちゃあけんな!」










食堂

「ふわあ〜…」
「お疲れのようだね」

七海が夕食を食べている時、不意に声がかかった

「利吉さん」
「やあ、久しぶり
教師の仕事はどうだい?」
「楽しいですよ。利吉さんはまた山田先生に用事ですか?」
「まあね」

見ると 利吉の隣には大きな風呂敷が置いてあった。きっと洗濯物だろうと七海は悟り、味噌汁を啜った

「…腕、どうかしたのか?」
「ごふっ!げほっげほっ!」

利吉の急な質問に 味噌汁を吹き出してしまった

「だ、大丈夫か!?」
「っ…はあ。大丈夫…で、す
なんなんですか?いきなり」
「いやね、きり丸が七海君の腕に包帯が巻いてあったと言っていたから 気になっていたんだ」
「あぁ…」

無意識に左肩を右手で押さえながら七海は言葉を続けた

「昔の傷です。でも見られたくないけん 手甲で隠したり、女装ん時は包帯巻いて見えんようにしとるんです。まあ きり丸には見られたけど…」
「昔?」
「利吉さんには関係ないです」

ごちそうさまでした。とその場を後にする七海を 利吉は疑問に思いながらも見送った

「昔の傷…ね……」
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