自覚なし

□十一話
2ページ/3ページ

造花をつくり終え、出来上がった物を届けにきり丸が出掛けると、家の中には2人が残った

「七海って 意外と器用だったんだな」
「なんそれ…不器用と思っとったん?」
「まあね。ま、女だから器用なのも当たり前か」
「ピシッ)」

何気なく発せられた言葉に 七海は思わず固まってしまう。いつバレたのか、それとも最初から知っているのか…

「性別を偽るのは 疲れないのか?」
「……別に疲れんよ。元から口は悪いし、兄貴と暮らしよったっちゃけん 女なんざとっくに捨てとるわ」
「私の他に知ってる者は?」
「五、六年生かな…つか、何で半助さんは僕が女って知っとるんよ」

七海が不機嫌そうに聞くと、土井は気まずそうに頬を掻いて目を逸らした

「怒らない?」
「あんたは子供か?内容聞かんと怒るも怒らんもないやろ」

呆れたように言う七海は 土井より年上に見える。それを本人も感じたのか、縮こまっている

「実はな…この前 組手をしただろ?その時に……な?」
「あぁ…あの時な。そんなら仕方ねぇか」

別に怒るわけでもなく、かといって恥ずかしがる素振りも見せずに納得する七海を見て 土井は唖然とする

「お前はそれでいいのか!?女としてのプライドはないのか!?」
「男としてのプライドはありますよ?」
「お前…っ〜!胃が痛い…」
「僕に女らしさを求めるんは無駄ですよ」

ニカッと笑って答える七海は どこか幼さも残っている。こんな顔も見せるのかと 土井は少し嬉しかった

「お前でもそんな顔するんだな」
「え、酷い。僕だって笑うわ!」
「いやいや、初めて会った頃は子供のくせに 大人びていたからな」
「は?」

そんな自覚のない七海は疑問符を浮かべる。若干顔が引き攣っているが…
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ