進撃の巨人
□New life 〜新しい生活〜
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自分で褒めるわけではないが、私は料理が得意だ。
普段忙しい分、最近はきちんとしたものを作れていなかったが、この際、この機会を存分に利用しようと10人分の夕食を作ることにした。
この世界のキッチンの勝手はわからなかったが、時々ペトラが(先程、自己紹介してくれた)様子を見に来てくれた。
おかげで、1時間程で完璧なディナーが完成した。その頃には話し合いも終わったのか、向こうから椅子の動く音がした。
皿に盛りつけてみんなの前に出せば、おいしそうと声が上がる。自分の料理を食べてもらって一番嬉しいのは、おいしいって言ってくれることと、食べ終わった後のごちそうさまという言葉だ。
人にこうやって料理を振る舞うのは何年かぶりだったから、その喜びは数百倍になった。
「温かい内にどうぞ」
みんな、お腹が空いていたのかすぐにスプーンを取ってすぐにがっつく。さすが兵士だ。
今日の夕食は体の温まるシチューと焼きたてのパンだ。ここではパンを食べる習慣があるのか、パン生地が常備されているらしい。後で、明日に備えてパン生地を作っておかなければ。
「そういえばソフィア。貴女はどこの出身なの」
ソフィアと呼ぶのはペトラだけだ。
そう言えば他の人たちは私が何者か知らないのだ。返答に困っているとリヴァイが助けてくれた。
「クリスティアナは孤児院の出身だ」
「へ?」
「故に出身も知らない。知らされているのは名前だけだ。確か、15か16になったから追い出されたのだろう」
「え、はい…行くところもなくて、ここで保護してもらうことになりました」
何とかリヴァイの嘘にのっかってごまかした。こうして話の辻褄を合わせることで、これ以上詮索されない。それに、この世界での記憶障害というのも隠すことができるし、私がイレギュラーな存在であることを隠すことができる。