進撃の巨人

□The start of something new 〜始まりの予感〜
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私はこのような状況に陥ることを、少なからず予測していた。



2日か3日前にネットで画像を漁っていた。勿論、大好きな「リヴァイ兵士長」
の。マウスであちこちクリックして、それで1時間潰した。その頃だった。


私は突然の不思議な感覚に戸惑った。


ふわり、とアルカリの強いような石鹸の香りがした。どこにでもありそうな石鹸の香りなのに、その香りが何かわかったのだ。

(リヴァイの香りだ…)

ついに頭がおかしくなったかと、私自身も思った。でもこれはリアルな感覚。一瞬でわかったこの香り。リアルなのに不思議だった。



これは、私に何かを予感させた。
でも、そんなことすぐに忘れてしまっていて今日まで思い出すことは無かった。




今日は少しだけ変わった1日だった。変わった、と言っても少しだけ買い物をしに町に出ただけだった。普段、仕事におわれる日々を送る私にとっては1日買い物に費やすことは少ない。仕事の疲れを癒やすものは唯、趣味のアニメ鑑賞とかばかり。だから私は滅多に外に出ることがない。おかげでここ2、3年は日焼け知らずの真っ白い肌を維持し続けている。

その私が、今日は1日外にいるのだ。服を買い、昼食を食べ、最近話題の小説を買ってそのまま喫茶店に入る。特別おしゃれなお店ってわけでもなかったけれど、人気があるのか店内には沢山の人がいた。沢山人がいたけれど、店員の接客が良いのか注文したアイスティーはすぐにやってきた。


本のページをめくりながら右の手元にあるグラスを取ってアイスティーを口に含め、ごくりと乾いた喉に通す。



すぐに本を読み終えてしまった私は、1つの物語を読み終えたという達成感と、意外な結末にただただ驚くというような気持ちでいっぱいだった。すっかりなくなってしまった2杯目のアイスティーの入っていたグラスを覘く。少し溶けかかった氷が店内の優しいオレンジ色の照明を反射して美しかった。ただの氷なのに、私の曇った感性はそれを美しいとしか感じ取ることができなかった。
こうして出かけてみるのも楽しいかもしれない、と思ったところで本を鞄にしまい伝票を持って会計しに行こうとした。


その時だ。
背中の右側に痛みという名の電流が走る。少し痛かったが、我慢してレジにむかう。次の瞬間、右肩から腰の左あたりに痛みが走る。今度は電流どころではなく、まるで鞭で打たれたような痛みだ。先程は、我慢できたが今度は無理がありそうだ。そう思った瞬間、レジの前で私は倒れた。




そして、こう悟る。私の人生はこれで終わりなんだと。





暗い世界に漂う私の体は浮いて、先へ先へと進んでいく。目を開けてみる。進む先も真っ暗で、これ以上目を開けている必要はないと理解した私はまた、目を閉じる。
白い光が差し込んできた。たった一筋の光に手を伸ばせば、その光は腕を伝い全身を温かく包んでいく。ふと、体の浮く感覚が止む。
背中にふわふわとした感覚がして、その感覚により深く体を沈める。


目を開く。光に慣れない私の目は、見えているものをただ白い影のように映す。人の影が1、2、3、4?寝ている私をのぞき込むようにしている様だ。


「…ほら、目を覚ましたみたいだよ!」


「…あんなに深い傷だったというのに…」


「…大体、…がいきなり切り付けなければこの子が傷つくことなかったのに…」
 

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