-神に愛されし者-

□第6夜【未来予知とトランプ:前編】
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『…それで…どうするの…?』


「お、おう…まずは情報収集からだな。

 手分けして聞き込みするさ!

 正午ぐらいにここら辺で集合って事で!」


『…了解…』


「ふん…」


「んじゃまた後でさ〜」


『…うん…』



ラビの提案通り、3人別々の方向に踵を返す。


シナデは東西方面に足を運び、聞き込みを開始した。

道行く住民に噂の真相を質問していく。


すると、実際未来予知をされたと言う人に話を聞く事ができた。



『…カード…ですか…?』


《あぁ、未来予知はカードで届くんだ。

 不幸とかが起きる前日に、必ず届く》


『…貴方も…そうだったんですか…?』


《そうだよ、前日のポストに入ってたんだ。

【明日馬車に乗るな 事故が起こるから】って書かれたカードがな。


 最初はイタズラかと思ってほっといたんだが、翌日寝坊して乗り遅れてな…

 誰も乗らなかったその日、運転手がメンテナンスしたら…馬車の車輪が壊れてたって後から聞いたんだ。

 もし誰か乗せてたら、一大事だったってな》


『…なるほど……つまり…未来予知されたカードは…送ってくるけど…

 …どんな人間かは…解らない…って事…ですよね…?』


《あぁ、俺の友人も未来予知のカードはきたけど、それだけで男か女かも解らないって》


『…そのカード…お持ちでしたら…見せてもらっても…いいですか…?』


《あぁいいよ。

 あの時からお守りとして、肌身離さず持ってるんだ。


 これだよ》



住民の男性から渡されたカードを受け取る。


手のひら程の大きさ。

白地に真っ赤な絵の具らしきもので

【明日馬車に乗るな 事故が起こるから】と確かに書いている。

その裏はモノトーン調の模様になっており、カードの種類から推察するに…



『(…トランプ…?)』



そう…未来予知のカードは、数字の代わりに予知の言葉が書かれた“トランプ”だったのだ。



『(…これも…何かの手掛かりに…なるかも)

 …ありがとう…ございます……色々お話も…していただいて…』


《いやいや、気にしないでくれ。

 それじゃあ俺はこれで》


『(……さてと…色々聞いたし…そろそろ時間…かな……戻ろう…)』



男性を見送り、自分も集合場所へと歩みを進める。



‘……エクソシスト…フフフフッ…’



その時、近くの路地裏で彼女を見つめる影が1人、口角を上げた。



───…



人混みが溢れてきた大通りを、静かに歩くシナデ。



『(…トランプを…持ってる人が…未来予知をする人の…可能性が高いから…)』



時折すれ違う人を見ながら、それとなくトランプを持っている人間を探す。



『(…でも…ここまでしてるから…簡単に尻尾を…出すわけ無い…よね…)』



半ば諦めかけ、俯こうとした時…



『…!』



視界の端に、確かに捉えたのだ。

モノトーン調の、トランプカードを。


それはすれ違った人間が、首から下げている物だった。

すぐさま踵を返し、その人物を追う。



『(…うっ…人混みが…)』



だが逆方向からの人波がはばかり、徐々に離れていく。

最後にその者が、前方の路地裏に入っていったのを目撃できた。

やっとのことで人混みから抜け、路地裏に向かう。



『…はぁ…はぁ… (ここに…入っていった…筈だけど…)』



少し息が荒くなりながらも キョロキョロと辺りを見回した。



‘おねえさん’


『…!』



背後から声が聞こえ、振り返ると…



『…っ!』



目前に何かが飛んできたので、防ぐと共にそれを掴んだ。


視線を落として見ると、それは…



『…!…トランプ…』



先程男性に見せてもらったものと すれ違った人間が下げていたものとも同じ、モノトーン調のトランプだった。


だがそれは裏地であり、表を向けると…



『…これは…』



【今日の午後は雨が降る 気をつけて】

またしても赤い絵の具のようなもので書かれていた。



『…未来予知の…カード…』



日付的には今日のものだが、明らかに未来予知を受けたシナデ。

つまり相手側は、こちらが調べている事を気付いている可能性がある。

再度辺りを見回してみるが、追っていた筈の人間の気配は、既に無かった。



『…一体…誰…?』


‘フフフフッ…フフフフフフッ……また後でね、おね〜えさん♪’



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