-桜色に染まりし姫君-

□#Cinque【Amici d'infanzia:Prequel】
2ページ/5ページ




それからあまり時間は経っていないが、ファミリーの屋敷の屋根上にて。



『……うん、今日はうまいこと出来たかな…』



あぐらをかき、自分の分だったジェラートを食べている姫君。

屋根といっても 街とは違って柵のある 屋上のようなものなので、痛くはないかと。



『ふぅ…さてと、今日はどうしよっかなー…』



食べ終わった器とスプーンを能力で収納し、ゴロンと寝転がる。


そのまま次第に 瞼が重くなっていく……と、思いきや。



‘…………、……………’


‘……、………………………’


『……ん…?』



微かに聞こえる 誰かの声。

誰かといっても、声のする方へ顔を向ければ 自ずと理解した。



『聞き覚えあると思ったら……リベルタとノヴァじゃねぇか』



屋根下近くの噴水には 先程食堂で共にリモーネ・パイを食べていた2人がいたのだ。

少年達は遠目でも分かるぐらいに、何かを話しあっている。



「………、自分……と…き合えてな…から そ………事……るんだ」


「…おま…は…うなん…よ」


「…なに……」


「お前は………と向き…えてる…か?」



『……あぁ? 聞こえねぇし……チッ』



流石に上からでは 声は微かにしか聞こえない。

ちょっとイラッとしたのか、舌打ちしている。


とかいうのも少しであり…



「………言うひ………は…い」


「フンッ!」



『…お、リベルタがどっかいった』



いつの間にか体勢を変え、柵に両頬杖をついて 低い故に膝立ちのウィディーエ。

時折、欠伸も混ざりながら見つめていて。


そして話し合いは終わったのか、リベルタが1人でその場を去った。

どちらも、暗い表情を残して。



『…やっぱ、昨日のは当たったみたいだな……世話の掛かるガキ共だ』



昨日の、とは 火事の現場でリベルタの所在を聞いた時 なんとなく呟いた言葉

『何事もなけりゃあいいがな…』というもの。

あの様子を見るに、予感は的中している。

さっきからため息ばかりだが、つかずにはいられないようだ。



『…ふぅ、さて……どうしよっかなー…』



いつの間にか居ないノヴァのいた噴水近くに降り立つ。


本日の予定を腰に手を当て、考えていると……



‘クックックッ…屋根の上で盗み聞きかね? 姫様’


『…あ゙ぁ?』



彼女に歩み寄って来たのは、これまた一緒に食べていたジョーリィ。

いつもの含み笑いと、ムカつく呼び方に眉を寄せて怒りをあらわにする。



「君は私の知る限り、怒っているところしか見ないのだが」


『テメェのその態度とかその他諸々がイラつかせてんだろーがよ。

 自覚しろハゲ』


「私はダンテではないがね」


『じゃあダンテ以上に剥げちまえ』



まともな会話になっていないのは、誰が見てもとれるほど。

彼の事が嫌いなウィディーエは、憎まれ口しか叩かない。


だがジョーリィの事だ。

なにかを企んでいるのだということも、姫君は感ずいている。



「ところで、君にちょっとした頼みがあるのだが」


『(やっぱり…)』



思った通り 持ち掛けてきた。

腕を組み、ジト目で彼を睨むウィディーエ。



『なにか企んでるとしか思えねぇお前の言うことなんて、聞きたくねぇんだが?』


「クックックッ……否定はしないよ」


『(しねぇのかよ)』


「だが…君の“立場”でいうのなら、どうかな?」


『………』



【立場】とは、仕事上のもの。


アルカナ・ファミリアでの2人の立場は、相談役と武術長。

簡単にいうと、No.2とNo.4。

つまり、ジョーリィの方が上である。


これはパーパの 義理とはいえ“娘”というのを抜きにしなければならない話だ。

元々それを振りかざす、愚かな女でもないが。



『……チッ! 出来る範囲の事でいえよ』


「そうこなくてはな、姫様?」


『…もう1回言ったら殺すぞ』



*
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ