-桜色に染まりし姫君-

□#Due【Il Comandante della Squadra Protezione Animali】
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マンマが合図をしたと同時に、ウィディーエの方へ駈け出したフェリチータ。

彼女はそれを迎え打つ構えをとる。


最初の一撃は妹の蹴り。

ウィディーエは腕で受ける。

すかさずナイフで空いている箇所をフェルは狙ったが、気付いていたのか 姫君は上へ高く跳ぶ。


そのまま着地するかと思いきや、槍を下向きに持ってフェリチータ目掛けて落ちてきたのだ。



『はぁぁ!!』


「っ!!」



間一髪逃げ切れた彼女。

槍が刺さった石床には、小さなクレーターが出来る程だった。



「うわぁ…姫、容赦ねぇなー…お嬢 大丈夫か…?」


「アイツはそういう奴さ…でなきゃ武術長なんて務まらねェ…心配は要らねェだろ」



リベルタが事の次第を見ながら冷や汗を流すが、デビトは心配などしていない様だ。

彼女から預かったリボルバー銃を ついでに不備が無いか確認している。


そんな外野の話はお構い無しに、手合わせが続く両者。

フェリチータはウィディーエ目掛けてナイフを投げた。

だがそれを無表情でかわし、その内の1本を掴んだ姉。



『…フェル、本気で来いって言ったろ? 何故顔の急所を狙わない』


「…そ、それは…」


『…ったく…そんなんじゃ…───』



持っていたナイフを手から放したウィディーエ。


そして…



『俺は倒せねぇぞ?』



言い終わる頃には、もう妹の前まで迫っていて。

そして蹴りを入れるのか、左足を上げる。

フェルはそれに気付いて自分の右側、蹴りが入る箇所をガードした。



[カシャンッ…!]



先程 ウィディーエが手から放したナイフが、床に落ちる音が響く。


まるでそれが合図かの様に口角を上げた姫君。

勢いよく左足を石床に下ろし、その足を軸に 反時計回りで左側、

彼女が全くガードしていない方へ蹴りが迫る。



「(!? 防げない───

「そこまで!!」


「…! マンマ…」


「第20のカード 審判【イル・ジュディッツィオ】の名において、この試合をここまでとします!」


『…流石。ナイスタイミング、母様』



ウィディーエの右足は、フェリチータの腰辺りで止まっている。

マンマが止める前に止めていたところをみると、どうやら最初から蹴るつもりは無かった様だ。



「(…姉さんが蹴る方向変えたの…全然気付けなかった…)」


「フェリチータ、ウィディーエ 2人共お疲れ様。


 それでウィディーエ、貴女の判断は?」


「!……」



マンマがウィディーエに、武術長としての判断を聞いた。

フェリチータが【剣】の幹部に相応しいかどうか。


隣で真剣な表情をするフェルに対し、ウィディーエは一呼吸置いた後 口角を上げて答えた。



『あぁ…全く以って申し分無いな。幹部としての強さは充分だ』


「え!?

 で、でも私 姉さんに1回も攻撃を入れられなかった…」


『あ? そんなの関係ねぇよ。言ったろ? 本気で来いって…

 それとも、あれは本気じゃねぇのか?』


「ううん!

 ちょっと躊躇…しちゃったかもしれないけど、あれは…私の本気よ!!」



お互い沈黙していたが、ウィディーエが優しく目を細め フェリチータの頭を撫でた。



『なら、それでいい…お前は充分強いよ。自信持て、な?』


「…うん…!」


「おめでとうございます、お嬢様ー!!」


「これで、お嬢が【剣】の幹部だな!」



わらわらとフェリチータ達の周りに集まってきた幹部達。


それを横目に ウィディーエは体を伸ばしながら、訓練場を出ていこうとした。



「ウィディーエ! もう戻るのか?」


『あぁ。

 手続きとか その他諸々は頼むわ、ダンテ。

 フェルは【剣】の“幹部”だぞ』


「あぁ、分かった」


「ウィディーエ」



再び話しかけられ 一瞥すると同時、何かがとんできたのを反射的にキャッチ。

見ると 愛用の銃が入った白のホルダー。



「暇だったから、確認しといてやったぜェ…たまには使えよォ?」


『ふん、お前と違って 俺は槍だけで充分な時が多いんだよ』


「ハッ、言ってくれるねェ…」



基本武器が二丁拳銃の昔馴染み。

しかし彼の助言も、掌返しで 踵を返した。



「姉さん!」



…のだが、三度目の呼び掛け。


振り返ると、妹が囲まれながらもこちらに手を振っている。



「姉さん、ありがとう!

 あの…これから、よろしくお願いします…!」


『あぁ…こちらこそ』



ヒラヒラと後ろ手を振りながら、訓練場を後にしたウィディーエだった。



──────……



『……なーんで今頃思い出したかな…こんな事…』



自室のベットで目を覚ましたウィディーエ。


時刻は、昼過ぎぐらいだった。



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