-桜色に染まりし姫君-

□#Uno【La notte del compleanno】
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夜になったレガーロ島 アルカナ・ファミリアの館。


今日はファミリーのパーパ モンドの誕生日。

館の広間では 祝いに盛大なパーティーが開かれている。


開催してしばらく経ち、殆どのファミリーが集まっていた。


1人を除いて。



* * *



館のある一室。

ベッドで横になっているのは、先ほど屋根で寝ていたウィディーエ。

シエスタ中に邪魔されたからだろう、館に帰ってからすぐに眠ってしまったようだ。



『…ん…んあ? ……あれ…?

 …そっか、寝ちまったのか 俺…』



このまま次の日まで眠ってしまいそうな勢いだったが、ふと 目を覚ました。

『う〜〜〜ん!』と体を伸ばし、欠伸しながら起きる準備を始める。



『(…もう少し寝たいけど、今日は父様の誕生日…だったな。

 流石に顔だけでも出さねーと、ダンテとか五月蝿そうだし……はぁ…)』



ベッドから立ち上がり、自室を後にしたウィディーエ。


いつもサボりまくりな彼女ではなかったようで、目を擦りながらも 広間へと向かっていった。



───…



会場に着くと、幹部達が何やら真面目な面持ちで話をしている。

どうやらタロッコについての話だったらしい。



『(…タロッコ…ねぇ…)』



思考し始めたウィディーエは、自然と 自分の左肩に手を添えた。



『(…ま、便利なもんだよな。


 人によっちゃ、代償で苦しんでる奴もいるが…俺は…───)』



暫く考え込んでいた姫君だが、視線を感じ 顔を上げる。

彼女を見ていたのは、他の幹部達にタロッコ、そしてアルカナ能力の話をしていた張本人。

黒髪にサングラスをかけた男 ジョーリィ。


何を思ったのか、妖しげな笑みを浮かべはじめる。



『(…クソジジィ)』



あまりにもムカつく視線だったので、心中で罵倒しながら睨み返す。

ジョーリィは「フッ…」と笑うとそのまま退散していった。



『…あのグラサン、いつか割ってやる』



小声で悪態を付いたウィディーエ。


ジョーリィがいなくなった後の幹部達の集いに、少し考えながらも近づいていく。



───…



「貴方まさかぁ!? お嬢様のあられもない姿を想像したりしたんじゃあ!?」


「んな…!? あられもない姿って、どんなだよ!?」


「…そっ…それは…───」



ルカがフェルの“あられもない姿”を想像しようとした その時…



[ドガッッ!!]

「い゙っっ…!?」


『…ルカ、邪魔』



ルカの帽子をもへこませて踵落としを食らわせたのは、仏頂面のウィディーエだった。



「いたたたた……え!? ひ、姫さ───


『あ゙?』



ルカの言葉を遮り、へこんでいた彼に上から目線で睨みつけるウィディーエ。

一瞬「ヒィッ!?」と怯えた後、帽子を整え立ち上がりながら小声で言い直す。



「い、いえ ウィディーエ…様…」


『…チッ』



舌打ちをかまし、一層眉間に皺を寄せた彼女。

この様子から察するに、彼女自身「姫」と呼ばれるのを好んでいない。


パーパの娘で お嬢の姉、通称“姫”と誰かが呼び始めた。

その本人は気に入ってもいないし 性に合わないと思っているので、近しい者が呼んでもいい顔はしない。


といっても、周りの人間は呼ぶのをやめる気は無いようで、いつかは彼女が根負けしそうだが…



「ヨォ、プリメーラ…ゆっくりなお着きじゃねェか。

 待ってたゼェ…?」


『今日はパーパの誕生日だからな。

 顔出さねぇとどっかのハゲが五月蝿いだろうし』



デビトの口説き文句であろう言葉をするりとかわして、それなりの理由を話すウィディーエ。

一応彼女にも 祝う気持ちはあるようだ。



『…で、何? まだ始まってねぇの?』


「うん、そろそろだと思うけど……


 あ、ほーら! ダンテの挨拶が始まるよ」



パーチェの指差した先には、幹部長でもあるダンテの姿。



「諸君。

 多忙な中 我がアルカナ・ファミリアのパーパこと、モンドの為にお集まりいただき、感謝する。


 始めに、パーパから話がある」



ダンテの挨拶の後、後ろの階段からパーパとマンマ…モンドとスミレが降りてきた。



《ファミリーの頂点!》


《栄光のアルカナ!》



広間では、パーパに歓声を上げるスートの人達。

それだけ彼は、ファミリーに愛されていると見てとれる。



「諸君、今日はよく集まってくれた。

 俺は今日59歳を迎えた。

 この日を迎えられたのも、諸君のお蔭だ」



歩きながらも スート達に感謝を述べていく。


そして中央で立ち止まり、モンドの話が始まる。



『(…パーパも出てきたし、帰ろっかな…)』



少し大きな欠伸をして、帰路に着こうとするウィディーエ。


…だが、次の言葉が 彼女の足を止めた。



*
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