-孤独の戦士-
□code.7【数撃ちゃ当たる:後編】
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「それに確かメガネくんは…助けたい子がいるから、ボーダーに入ったんじゃなかったっけ?」
「…!」
「…ふむ?」
警戒区域内にある 無人の公園にて。
夕暮れの後光を背景に、迅と修と遊真は大事な話をしていた。
ボーダーに入隊した理由は人それぞれだろうが、三雲にもしっかりとある。
「じゃあおれはここで。
メガネくん達も気を付けて帰るんだよ〜」
「あ…ありがとうございます、迅さん!」
「またね、迅さん」
一足先に 2人を残して公園を出る。
入口を通り過ぎる前、覚えのある背中を見付けて駆け寄った。
「ごめんごめん! お待たせ〜」
所々欠けた柱に寄り掛かっている、仮面の者。
『…お前最近人使い荒いぞ』
腕を組んでいる“彼女”ネアは、顔さえ見えないものの 明らかに不機嫌そう。
そりゃあここ数日、仕方ないとはいえ 彼に振りまわされた様なものだからだ。
「返す言葉もないよ…ほんとごめんね。
埋め合わせは必ずするから! このとおり!」
『……フン。
ていうか何が〈一緒に帰ろ♪︎〉だ。
私とお前じゃ、方向違うだろうが!』
顔の前で両手を合わせて、深々と頭を下げる迅。
暫しの沈黙の後、くぐもった溜息が。
そしてスマホを取り出し、彼とのトーク画面を開いて見せつける。
若干お怒り声で。
先程〔ペルソナ〕に表示されていたのは、自動で転送されてきたコレだった。
「えーでも、玉狛【うち】にご飯食べに来るなら一緒でしょ?」
『!……チッ』
「(舌打ちされた…)」
確かにその通りだが、またもプライドの問題で機嫌が悪い。
ショックを受けながらも 公園から歩き出したネアの横を進む迅。
『…視えてたのかよ』
「違う違う。
昨日小南が おれの所為でアユちゃんと晩飯食べれなかったって怒られたから、そのお詫びも兼ねて…かな。
…だから、一緒に帰ろ?」
警戒区域を出た辺りで トリガーを解除した迅は、1度立ち止まる。
そして、生身の時に持っていたぼんち揚げの袋を差し出した。
因みに食べかけを。
『…晩御飯食えなくなるぞ、バカ』
振り向いたネアは 暫くお菓子を見つめ、また溜息。
次に彼女もトリガーを解除し、袋を取った。
しかし、食べずに持って歩き出す。
つまりそれは、一緒に行くという暗黙の了解なのだ。
踵を返した鮎を追いかける 悠一の口角は上がったまま。
「あと1枚だけ〜。アユちゃんも食べる?」
『…1枚だけな』
手元から遠慮なくぼんちを取っていく彼を見ていると、なんとなく欲しくなる。
人の 性【さが】だと思うが
『(…そういや朝から何も食べてなかった)』と思い至るアユであった。
*