-孤独の戦士-

□code.4【似非双子の災厄:前編】
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既に日は沈み、空が黒く染まり始めた午後5時頃。


先程のやり取りから 約1時間は経っていた。



「ネアちゃ〜ん、何体倒した?」


『んなもんいちいち覚えてねぇよ』



積みに積まれた 近界民【ネイバー】の残骸。

バムスターやらバンダーやらモールモッドやらが混ざって混ざって、正直どれがどれだか判別不可。

そんな山の上にお互い背中合わせで、迅はしゃがみ ネアは立って雑談を挟む。


といっても、討伐は既に終わっていた。



「うっそだ〜!

〔ペルソナ〕で確認出来ることくらいおれ知ってるからなー!」


『(うぜぇ…)』



ぶーぶーと頬を膨らませる 19歳の自称男。

イラっとして仮面越しに横目で あからさまな嫌悪の視線を向けた彼女。

迅は気付いているのか知らないが、態度を変えない彼に癪だが折れ こめかみに触れる。



『……お前が12、私が18、合計30だ』


「うわっ負けた〜!」


『最初から競ってねぇよ!』



更にイラついて限界間近。

ネアにしては珍しく 些か大声で叫んだ。


仮峰は迅に対してだけ 他の人間とはかなり態度が違う。

では、彼の事が嫌いなのか?


いやいや、それはもっと先に解ることである。



[チチチチ…]



話の区切りに、迅の通信機が音を鳴らす。



「はいはいもしもし?」


〈俺だ、片付いたか?〉



インカムに手を触れ、応答する青年。

通信相手は彼のボス 玉狛支部 支部長 林藤 匠。

迅にとっても アユにとっても、旧ボーダー時代からの馴染みである。



「こっちは終わりました。むこうのチームも、もう終わるでしょ」



ちらりと向けた視線の先で、大きな爆発がここまで響く。

相当の実力者が討伐していると見てとれた。


なんとなく、それに見覚えがあるネア。



〈よし、おまえは本部に直行しろ。城戸さんが呼んでる〉


「ほう、本部司令直々に…この実力派エリートをお呼びとは」


『(視えてたくせに…)』



結局予知通り、本部からの収集がかかった迅。

またもや横目で睨まれながらも「よっこらせっ…」と立ち上がり、右手の〔風刃〕を納刀した。



「それじゃ、おれ行くよ アユちゃん」


『はいはい、さっさと行けバカ』



しっしっと彼に手を払うネア。

これもこれでいつものやり取りだな…と思いながらも、苦笑いの迅。

解っていても、少し寂しいらしい。



「…あ、そうだ。後でおれ、きみに連絡すると思う」


『…は?』



行く前に 聞き捨てならない言葉が耳に入り、思わず彼へ振り返った。

迅はいつもの笑みを浮かべて、彼女を見ている。



「学校に出現したイレギュラー 門【ゲート】の話は聞いてる。

 おれが上層部に呼ばれたのも その関係みたい」


『あぁ、お前が呼び出されるのってそういう理由か。

 …で、それと私に連絡するのとどういう繋がりなんだよ』


「いやー実は、その解決法を見つける為に おれが関わる人物とアユちゃんは 友達みたいなんだよね。

 おれのサイドエフェクトがそう言ってる」


『…! それって…』



顎に手を当て、考え始めるネア。

案外簡単に思い当たり、口を開く。



『…おさむ、か…?』


「んー、名前は聞いてなかったけど 多分その子。

 (下の名前で呼んでるんだ…ちょっと悔しい…)

 おれ、メガネくんと会ったことあるから」


『へぇ、そうだったのか…(メガネくん、て…)』



なんとも簡素なあだ名だと思いながら、一応納得する。


正直 鍵を握っているのは 修ではなく“もうひとりの彼”なのではないかとも考えたが、

話がややこしくなりそうなので 、黙る事にした。



「とにかく、そういうことだから 後でよろしくー」


『…連絡されるのは構わないが、時間的に寝ていて出れないかもしれないからな』


「その時はLINEするから〜。じゃあね、アユちゃん!」


『ん』



ひらりと手を振り、本部へ跳んでいった迅であった。



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