-血統がない王太子と 血統の消えた王子と 血統を捨てた王女-

□#cahar【戦士を目指す者】
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『ねぇヴァリ、貴方の甥ってどんな人?』



賑やかな市場を歩く中、ふと浮かんだ疑問。


ローゼンタールは ヴァフリーズに甥がいた事すら知らなかったのだから。



「そうですな……

 変なところに真っ直ぐな子どもで、今など 身体を鍛えることばかりにこだわっている…


 全く、誰に似たのやら…」


『ふ〜ん、真面目なんだね…って、子ども?』


「えぇ、甥は今11歳。

 王女…いいえ、ローゼンタールとは 2歳違いになるな」



流石に自分と近い年代だとは思いつかなかったらしい。

ただ単に「甥」の意味もあまり分からないとか。


頭は良い方だが、彼女はこれでも9歳の少女なので。



『そうなんだ… (兄様と…同い年…)』



他人と接する機会が少なかったので 心配していたのだが、

一番の理解者だった兄と同年代だと聞いて、なんとなく親近感が湧いた。


それからしばらく歩いて、奥まった区へ。


ここは主に、軍人の家族が暮らしている。

ヴァフリーズの家もあり、そこに甥が来ているという。



『…あたし、ここに来ても大丈夫なの…?』


「心配ない。

 “生前”の貴女を知っている者は、私以外おりませんので」


『そう…

 (1人最後に会っちゃったんだけどな……ま、いっか)』



さらっと大事なことを流したが、それはさておき。

建ち並ぶ家々の中でも、ひときわ大きな豪邸に到着。


すると、ちょうど裏の敷地にあたるほう。



[カンッ! カンッ!]


『(…? この音って…)』



何かと何かが当たる衝突音。

おそらく、木と木。

何故なら、兄の鍛錬中に聴いたのと似ているから。



「こっちだ」



引っぱられていくと、音はより鮮明に。


そうして到着した場所では、ひとりの少年が 木で出来たかかし相手に、木刀で鍛錬していた。



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