-血統がない王太子と 血統の消えた王子と 血統を捨てた王女-

□#do【恨みのはじめ】
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未だ炎の消えやらぬ 離れの宮。


火の粉が舞い上がる近場で、大将軍【エーラーン】アンドラゴラスは それを見つめていた。


絶望しているだとか 悔やんでいるだとかではなく、ただ まっすぐに。

自分の“行い”に 迷いはないと、瞳だけで語っていた。



《王弟殿下ーー!!》



燃え盛る火音の隙間から、彼を呼ぶ兵が1人。



「…どうした」



視線はそのままに、背後で跪いた一兵に問う。


男は下唇を噛み、冷や汗をかいていて。

とても良い知らせではない、と 見ていない王弟以外は感じとった。



《…殿下、大変申し上げにくい事なのですが……


 先程から、ラミアローゼ王女の行方が掴めないのです》


「……なに?」



組んでいた腕を解き、やっと視線を後ろへ向けた彼は 些か驚いていて。



《王女付きの侍女からの情報で、昨晩部屋へ御案内したのち 火事の騒ぎで再度参った際……


 部屋は もぬけの殻だったそうです…》



兵は無意識にも 顔を上げることはできなかった。

圧殺されそうなくらいのオーラが、頭上に漂っていたからだ。



「…報告をする暇があるのなら、王女を探さんか!!

 あ奴は…ラミアローゼは殺してはならんと、全てが始まる前に命じた筈だぞ!!」


《も、申し訳御座いません…!!

 全力で探してまいります!!》



男は震え上がりながらも、職務全うの為に離れていく。

もちろん周りの者達も。


鎮火させる最低限の兵士以外に、アンドラゴラスの周囲には 誰もいなくなった。



「(…迂闊だった。

 先に所在を調べておけば、こんな事には…───)」



少し俯き、踵を返して もう一度火の宮を見る。


彼の頭に浮かぶのは、少し前に 兄から託された“最後”の願い。



───…我が弟よ……───


───呪われた子を、生かしておくな───


───そして、どうか“私達”の娘 ラミアローゼだけは……お前が守ってやってくれ…───



死ぬ間際、呪いの言葉と共に紡がれた 切なる願い。


正妃の死後、バダフシャーン公国を併合させ 自分の行った“裏切り”行為に

いつしか会うことも 娘に拒否されていた。


9歳であれど まだまだ幼いラミアローゼは、父の考えがわからず 信じられなくて。

結局最後の日まで、仲違いのまま別れてしまった。


だからこそ、弟のアンドラゴラスに 愛娘を託すという方法しかなく。



「……兄上、私は……兄上の願いを、全うできぬかもしれません…」



拳を握り 俯く彼のそんな姿は、もう2度と見ないだろう。


亡き家族からの思いを踏みにじるなんて事は、ある筈がないのだから。



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