-霧世に舞い降りし闇水の乙女-
□#Zwei【血操の人と別世の者】
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『へぇ〜… 氷の次は炎、か……(モハメドを思い出すわね……)』
こちらも 固まっていた右手の氷を溶き、相手側の様子を見やる。
同じような力を持つ仲間がいたのを、うっすら懐かしみながら。
「…アンタの能力、スカーフェイスさんと同じって所か?」
はみだした水が 地面に滴り落ちるのを尻目に、前へ出たザップ。
肩に血で構成した剣 焔丸【ほむらまる】を乗せて。
『あら、それを貴方に言う必要があるかしら?
炎の能力を持つ おに〜いさん♪︎』
ニコリと微笑み、彼と対峙する姿勢を取るアルト。
相変わらずの喋り方で。
「…別に言わなくてもいいぜ。どうせ、俺の力には関係ねェ」
刃物を肩から外し、男はそれとなく構える。
しかし 攻撃するにしてはおろそかで、アルトは違和感を感じた。
『(…? 剣を使う気はないということかしら…?)』
不思議に思いながら様子を伺っていると、遂には剣を片付け ザップはポケットからジッポを取り出す。
先程スティーブンの氷を溶かすのに使用したもの。
付けずじまいだった葉巻に持っていき、点火する為に蓋を開けた。
その瞬間…
「斗流血法【ひきつぼしりゅうけっぽう】…刃身の弐 空斬糸【くうざんし】」
『…!!』
彼女へ一直線に、火が向かっていったのだ。
『(これって…)』
「逃げようとしてもムダだぜ。
アンタの周りには、既に“仕掛けておいた”からな」
『(やっぱり…)』
炎が迫っている中、チラ…と自分の周囲に目を凝らす。
すると、さっきも見た赤い糸が 囲むように何本も漂っていて。
これは 発火性の高いザップの血液だからこそ、できる芸当。
斗流血法【ひきつぼしりゅうけっぽう】・カグツチによるものである。
とかなんとか言ってる間に、赤糸の導火線は最終まで到達し…
[ドオォォォォン!!!]
「うわぁっ!?」
爆音をたてて、炎の柱がアルシュネムトを包んだ。
離れていたといえど、突然の事に声を上げるレオ。
彼以外は 静かに見ていたが。
「(逃げる素振りは見せなかったが…諦めたのか…?
…いや、コイツらが逃げるなんてこたァしねェ。
…つまり、まだ───)」
これで倒せると確信できる程 ヤワな相手ではないので、葉巻を吸いながら 様子を伺っていたザップ。
[パリンッ!]
それを遮るように、ガラスの割れた音がする。
『闇水使断【アミシダ】Side.Aqua【サイドゥ.アクア】…小辻[こつむじ]』
「「「!?」」」
突如 爆発の中心地で水柱が上がり、火を消火していく。
間欠泉 というより、意志を持った水が回転し 彼女を囲んでいるかのように。
重力に従って舞い上がり、小雨の如く降り注ぐ。
近くだった男2人は、水を被りながらも 声のした方を見据えた。
『フフッ…残念だったわね。
貴方の能力が【炎】でなければ、いい線いっていたのに』
クスクスと 口元に笑みを携えて、女は言う。
その身体は 怪我も 服が焼けた跡もなく、水にすらも濡れていなかった。
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