-霧世に舞い降りし闇水の乙女-

□#Zwei【血操の人と別世の者】
2ページ/4ページ




『へぇ〜… 氷の次は炎、か……(モハメドを思い出すわね……)』



こちらも 固まっていた右手の氷を溶き、相手側の様子を見やる。


同じような力を持つ仲間がいたのを、うっすら懐かしみながら。



「…アンタの能力、スカーフェイスさんと同じって所か?」



はみだした水が 地面に滴り落ちるのを尻目に、前へ出たザップ。

肩に血で構成した剣 焔丸【ほむらまる】を乗せて。



『あら、それを貴方に言う必要があるかしら?

 炎の能力を持つ おに〜いさん♪︎』



ニコリと微笑み、彼と対峙する姿勢を取るアルト。

相変わらずの喋り方で。



「…別に言わなくてもいいぜ。どうせ、俺の力には関係ねェ」



刃物を肩から外し、男はそれとなく構える。

しかし 攻撃するにしてはおろそかで、アルトは違和感を感じた。



『(…? 剣を使う気はないということかしら…?)』



不思議に思いながら様子を伺っていると、遂には剣を片付け ザップはポケットからジッポを取り出す。

先程スティーブンの氷を溶かすのに使用したもの。


付けずじまいだった葉巻に持っていき、点火する為に蓋を開けた。


その瞬間…



「斗流血法【ひきつぼしりゅうけっぽう】…刃身の弐 空斬糸【くうざんし】」


『…!!』



彼女へ一直線に、火が向かっていったのだ。



『(これって…)』


「逃げようとしてもムダだぜ。

 アンタの周りには、既に“仕掛けておいた”からな」


『(やっぱり…)』



炎が迫っている中、チラ…と自分の周囲に目を凝らす。

すると、さっきも見た赤い糸が 囲むように何本も漂っていて。


これは 発火性の高いザップの血液だからこそ、できる芸当。

斗流血法【ひきつぼしりゅうけっぽう】・カグツチによるものである。


とかなんとか言ってる間に、赤糸の導火線は最終まで到達し…



[ドオォォォォン!!!]


「うわぁっ!?」



爆音をたてて、炎の柱がアルシュネムトを包んだ。


離れていたといえど、突然の事に声を上げるレオ。

彼以外は 静かに見ていたが。



「(逃げる素振りは見せなかったが…諦めたのか…?


 …いや、コイツらが逃げるなんてこたァしねェ。

 …つまり、まだ───)」



これで倒せると確信できる程 ヤワな相手ではないので、葉巻を吸いながら 様子を伺っていたザップ。



[パリンッ!]



それを遮るように、ガラスの割れた音がする。



『闇水使断【アミシダ】Side.Aqua【サイドゥ.アクア】…小辻[こつむじ]』


「「「!?」」」



突如 爆発の中心地で水柱が上がり、火を消火していく。

間欠泉 というより、意志を持った水が回転し 彼女を囲んでいるかのように。


重力に従って舞い上がり、小雨の如く降り注ぐ。

近くだった男2人は、水を被りながらも 声のした方を見据えた。



『フフッ…残念だったわね。

 貴方の能力が【炎】でなければ、いい線いっていたのに』



クスクスと 口元に笑みを携えて、女は言う。


その身体は 怪我も 服が焼けた跡もなく、水にすらも濡れていなかった。



*
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ