-零下を称す至毒の血-

□#Zwei【魔封街結社:後編】
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障害も片付け、ライブラの任務は完了。


現場からは分かりもしないが、何処かに居る 犯人【かの王】は暴れ転がっていた。



「相変わらず、相手にャあ気の毒な能力だな。“毒”だけに」



上手い事言ったとでも思ってるんだろう。

葉巻を加えながら、してやったり顔で少女を見下ろすザップ。



『…五月蝿いんだけど…何、ザップも要るの』


「要らねェよチビスケ」


『…殺す』


「やれるもんならなァ〜?」



仲間だとしても、その人の悪口や禁句を遠慮なく口にするのがこの男。

ヴィータにとって【身長に関する言葉】はキレる原因なのだ。


ジト目がかなり細められ、視殺しそうな視線を諸共せず、彼女の頭をぐしゃぐしゃ撫で始める。

纏まった髪が乱れるのも何のその。


次第に相手する気が失せたのか『…バッカみたい』と手を振り払うイヴィリタ。

パッパと髪を直して、少年に走った。


因みにローラーは既に片付けてます。



『…えっと、レオくん…大丈夫…?』


「……あ…は、はい イヴィリタ…!」


『…そっか、良かった…猿くんも…』


[キッ!]



盗ったカメラを返し、彼の頭に乗った音速猿とレオナルドを見つめて ホッと息を吐く。


身長は似てなくても兄妹。

出会ってまだ数時間でも、無事と判って自分の事のように安心した。



『…あの時は、手を伸ばしてくれて…ありがとう…』


「いやっそんな…!

 無我夢中だったから……キミも無事で良かった…」


『……つまり、お互い様…?』


「ハハッ…そうなるね」



原付が切断された時とは逆に、ヴィータが差し出す。

座り込む彼の助けという意味でも。

小さい身体ながら、難なく立たせられるのも 兄が関係していたり。


それから猿を撫でたりして 雑談を始める2人。



「………チッ…」



離れているが故に…いや、彼ならば本人達が前でもやるだろう。

明らかに不機嫌オーラ増し増しの舌打ちを。


終わりの葉巻を道で踏み消し、ズカズカと2人に近付いていく。



『…ノミが、ゲートだったの…?』


「そうなんだよ、予想外で…痛たっ!!」


『…!』



掌に乗せて 音速猿の頭を指で撫でている少女。

気持ちいいのか、目を細めてされるがままの小動物に 自然と頬を緩める。

感情に乏しい方なので、微妙なくらいの変化だが。


レオも緩めて見つめていると、突然頭を殴られる。



「おォいチビ共、さっさと旦那んとこ行くぞ」



張本人は 今彼の頭に乗っかってきたザップ。

少年を挟んで、イヴィリタを見下ろす。

黙ったまま、彼女は睨み返すが。



「ちょっ…だからって殴ることないでしょう!?」


「うっせェ陰毛頭」


「いっ…!? アンタなんて事言うんだ!!??」



発想がゲスのあだ名を早速使い始める。


ツッコミの才能があるレオナルドは、彼の言葉に羞恥で紅くなりながらも反発した。



「(…嫉妬するくらいなら ハッキリ言えばいいのに、SS…)」



少し離れた所で、呆れながら見ているチェイン。

ぎゃいのぎゃいの騒ぎだした片方の男が 大嫌いなのもあるが。


何に、とは 今言及することではのでまた今度。



『…スメちゃん』


「ん、どしたのヴィータ」



いつの間にか、掌の猿はそのまま 彼女の近くに移動していた少女。



『…陰毛…って、何…?』


「………知らなくてもいいわ」


『…?』



クラウス同様、いやそれ以上に箱入り娘なイヴィリタからの爆弾質問。

一瞬顔が引き攣りそうになったが、あの銀猿の所為だと決定づけて濁した。


とてもじゃないけど答えてはいけない。


今日も“至って平和”に、仕事は終了です。



───こうして、召喚事件は 幕を閉じた。


次の幕開けは、自己紹介。



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