-闇の血の戦乙女-

□1.【闇と悪】
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【ディオside.】



足音が止んだと思ったら、突然僕の視界が暗くなった

ちょうど僕の背中に、月が出ている状態なのに


原因はひとつ、それは【影】

僕に重なると同時に、風で何かが靡く音がした


振り向いた僕の後ろには…真っ黒なコートを着た奴が立っていたんだ…!



「…っ……!」



コートは上から下まで漆黒で袖も無く、フードを被っているから 性別も分からない

しかも、そいつは隙間から辛うじて見える目で 僕を見下ろしていた


このディオを 見下【みくだ】すとは、虫酸が走る!!

…なのに、コイツの赤い瞳に逆らえないのは 何故だ…?


…クソッ!!



[コツ…コツ…]



アイツ! 散々見下してから、通り過ぎていきやがった…!!


だが、そっちは…!



《なあんだぁテメェ?

 見ねぇ奴だが、ディオの知り合いかぁ〜?》



アイツ…よりによってそっちに行くか!?

あの男は誰彼構わず襲う奴なんだぞ…!!

どうなっても知らないぞ!



『ディオ?……あぁ、あの子の事ね。知らない子よ?』


《《《!?》》》


「(なっ…!?)」



僕も あの男達も、全員が驚いた

やっと口を開いたかと思えば、ソイツの声が“女の声”だったから


女がこんな場所に独りでいるなんて、どういう神経なんだ…



《…ほぉ〜、そうか。

 ところで、レディがこんなとこに来るたァ…判ってんのかい?》


《《《へっへっへっへっへ…》》》



案の定だ、男共が薄汚い笑みを浮かべている


…どうするんだ、あの女



『此処がどこか…ね。

 知ってるわよ、食屍鬼街【オウガーストリート】…でしょ?

 ここに入ったら、死のうが犯られようが文句は言えない。


 …でも、それは“貴方達”にも適用されるわよねぇ?』


《あぁ? 何ふざけたこと───》



男の声に重なって、変な音が聞こえた


次の言葉が発せられる、一瞬の間

何かが掠れる音と、何かを斬る音が続けて響く


それから、やっと気付いた

女の左手に、剣にしては細身の 赤黒い刃物が握られていた事に



《《《!?》》》


「(い、いつの間に!?)」



僕はあの女をずっと見てた筈だ

なのに1秒と1秒の間に、刃物を出したってことになる

アイツ、どれだけ速いんだ…!?



《な、なんだその黒い剣は!?》


『剣? 違うわ、これは 刀【かたな】

 東洋の島国に伝わる、片刃の武器。


 そんなことより 私がこんな危ないもの出してるのに、リーダーさんの心配しなくていいの?』


《は? リーダーは傷なんて…───》



男共のひとりが、リーダーの奴に近付いていく

その途中、水滴が落ちる音がした



《…?》


《!? リーダーの足元に血が!?》



僕は前から見ていたが、女が刃物を片付けていて隠れている

だが、ひとりが叫んでから足元は見えた

辿っていくと、男の口端から滴っている


そこからは、ゆっくり感じた



*
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