-奇石のすべは奇跡を生み出すか-

□Crerk.3【2度目の水辺:後編】
3ページ/4ページ




「イズミ、何かあったら呼べよ」


「コホッ…ありがとう、あんた」



家に戻って買ったものを整理していると、正午近くに。

ご飯の用意はシグに任せて、間にさっきの約束を。


その時、咳をひとつ零した彼女。

風邪かなと思いながらも イズミ自身 準備を始めたので、考えるのをやめた。



「一から説明すると日が暮れちゃうから、簡単に話すよ」


『あぁ、たのむ』



マリが使うことになった部屋の机に、木材を1つ。

まだ裁断もされていない 真新しいものだ。



「コホッ…錬金術は、物質を理解・分解・再構築する科学。

 錬成陣に構築式を組み込んで、発動するのが一連の流れ。


 …私の場合は、そこを省くんだけどね」



パンッと胸の前で両手を合わせ、次に机へ。

すると 青白い雷のような光が表れる。



『うっ! ……?』



眩しさで目を瞑ってしまい、少しして 徐々に瞼を上げる。


目の前の板には、先程まで無かった文字が刻まれていた。



『これは…わたしのなまえ…』



アルファベットで【マリ】と、まるで彫刻刀を使って綺麗に彫られたように。

ただ手を合わせただけで、物に変化が起こるなど、今まで見たことがない。



『…すっ…すごい…! イズミさん、いまの───』



精神は子供ではないが、探究心はある。

瞳を輝かせ、彼女を見上げたマリだったが…



『…え』



それ以上言葉を続けられなかった。


何故なら、まず目に入ったのは“赤”で。



「うっ…ゴホッ! わる…あの、人を…ゴホッ!!」


『イズミさんっ!!』



口を被う指の間から、ポタリと床に落ちた血液。

次第に支えが効かなくなり、崩れ落ちる。



『…すっ…すぐシグさんよんでくるから!!』


「ゴホッ!…あぁ」



最初に彼が言っていた意味を、今理解した。

風邪なんかじゃないと。


普通の子供なら動けなくなるだろうが、イズミの頼みを思い出し キッチンへ走る。



『シグさん! イズミさんがっ…!!』


「!! すぐ行く!」



曖昧な記憶は頼らず、いい匂いのする部屋に入るとビンゴ。

フライパンで野菜を炒めるシグの後ろ姿に 開口一番で伝えると、火を切って走る。

エプロンを外しながら。


すぐに追うため、廊下を戻ろうとした。



『…!』



リビングのソファを、たまたま視界に入れる。

何の変哲もないが、マリにとって 見覚えのあるものが置いてあった。



*
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ