-奇石のすべは奇跡を生み出すか-

□Crerk.2【2度目の水辺:前編】
2ページ/4ページ


【夢主side.】



冷たい……じとじとする…

…これは…雨…か…?


身体の至る所にぶつかる感覚は、覚えがあった



『……ん…』



起きたばかりなのか、力が入らない


辛うじて瞼を上げると 一面に見えるのは砂

口の中にも入ったみたいで、じゃりじゃりする


それに肩の辺りまで、ひんやりと濡れる感覚が定期的にある

多分これは、波に浸かってるんだ


前にもあった…ルダの村を追い出されて、船が壊れて、流れ着いて…

あの時村長が助けてくれなかったら、私は死んでただろう


またこんな目にあってるのか。

自分でなんとかできればいいが、さっきから身体がいうことをきかない

意識もまた飛びそうだ…



『(今度こそ…私は……───)』



もう、駄目かもしれない。



‘……! …っ……!’



…? …だれ、か……───



* * *



それから数日経ち、2月7日。



『ん……』



小鳥の囀りが外から聴こえる室内で、彼女は目を覚ました。



『…ここ…は……どこ、だ…?』



記憶を手繰り寄せてみても、自分がこの部屋に入ったものは無い。

つまり誰かが運んでくれたという事になる。


水辺にいたから、その近くの村かと考えていると…ドアノブが回った。



「あら、目が覚めたんだね!

 身体は大丈夫? 2日も熱で魘されてたんだよ」


『あ…えと…だいじょうぶ、です… (あれ、なんか喋りにくい…)』



入ってきたのは、黒髪の女性だった。

細いドレッドが肩程まであり、スラッとした印象。

鎖骨の刺青は初めて見るもので、何か意味があるのだろうかと思う。


同時に、自分の声や口の動きに違和感を感じた。

元々少し低めだが、1トーン高い。

呂律も満足に回らず、酒も飲んでいない筈。



「そうか良かった…少しでも変に感じたらすぐ言うんだよ」


『(気のせいか…?)

 は、はい…あの…たすけていただいて、ありがとうございます。

 しつれいですが、おなまえをきいても…?』



どちらにしろ、自分より背の高い人間は大体歳上という予想で 敬語になる。

相変わらず、しっかり話せないが。


近付いて来た女の人を見上げて、質問を述べる。



「あぁ、そうだったね。

 私はイズミ・カーティス。

 後で旦那にも知らせるよ、だいぶ心配してたから。


 にしても、そんなに畏まらなくてもいいんだよ?

 子供はのびのびしてないと」


『はぁ、でも……え…こども?』



イズミと名乗った彼女は、おもむろにマリの頭を撫でた。

あまり経験がなく 少し面食らっていたが、ふと気付く。


身長は平均より少し上だが、他人【ひと】からよく童顔だと言われていた。

しかし「子供」とまで 面と向かって言われたのは1度も無い。


恐る恐る、反対側にあった鏡を見た。



*
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ