-奇石のすべは奇跡を生み出すか-
□Crerk.2【2度目の水辺:前編】
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【夢主side.】
冷たい……じとじとする…
…これは…雨…か…?
身体の至る所にぶつかる感覚は、覚えがあった
『……ん…』
起きたばかりなのか、力が入らない
辛うじて瞼を上げると 一面に見えるのは砂
口の中にも入ったみたいで、じゃりじゃりする
それに肩の辺りまで、ひんやりと濡れる感覚が定期的にある
多分これは、波に浸かってるんだ
前にもあった…ルダの村を追い出されて、船が壊れて、流れ着いて…
あの時村長が助けてくれなかったら、私は死んでただろう
またこんな目にあってるのか。
自分でなんとかできればいいが、さっきから身体がいうことをきかない
意識もまた飛びそうだ…
『(今度こそ…私は……───)』
もう、駄目かもしれない。
‘……! …っ……!’
…? …だれ、か……───
* * *
それから数日経ち、2月7日。
『ん……』
小鳥の囀りが外から聴こえる室内で、彼女は目を覚ました。
『…ここ…は……どこ、だ…?』
記憶を手繰り寄せてみても、自分がこの部屋に入ったものは無い。
つまり誰かが運んでくれたという事になる。
水辺にいたから、その近くの村かと考えていると…ドアノブが回った。
「あら、目が覚めたんだね!
身体は大丈夫? 2日も熱で魘されてたんだよ」
『あ…えと…だいじょうぶ、です… (あれ、なんか喋りにくい…)』
入ってきたのは、黒髪の女性だった。
細いドレッドが肩程まであり、スラッとした印象。
鎖骨の刺青は初めて見るもので、何か意味があるのだろうかと思う。
同時に、自分の声や口の動きに違和感を感じた。
元々少し低めだが、1トーン高い。
呂律も満足に回らず、酒も飲んでいない筈。
「そうか良かった…少しでも変に感じたらすぐ言うんだよ」
『(気のせいか…?)
は、はい…あの…たすけていただいて、ありがとうございます。
しつれいですが、おなまえをきいても…?』
どちらにしろ、自分より背の高い人間は大体歳上という予想で 敬語になる。
相変わらず、しっかり話せないが。
近付いて来た女の人を見上げて、質問を述べる。
「あぁ、そうだったね。
私はイズミ・カーティス。
後で旦那にも知らせるよ、だいぶ心配してたから。
にしても、そんなに畏まらなくてもいいんだよ?
子供はのびのびしてないと」
『はぁ、でも……え…こども?』
イズミと名乗った彼女は、おもむろにマリの頭を撫でた。
あまり経験がなく 少し面食らっていたが、ふと気付く。
身長は平均より少し上だが、他人【ひと】からよく童顔だと言われていた。
しかし「子供」とまで 面と向かって言われたのは1度も無い。
恐る恐る、反対側にあった鏡を見た。
*