-黒赤天使の羽は何色?-

□Story.?【竜胆の花】
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‘リ〜〜〜ンド〜〜〜に〜〜ぃ!!’


「うおっと…!」



突然自分の名を呼ぶ声と、突然背中にぶつかった衝撃。

といっても、呼び方に特徴があるし 細身ながら逞しい彼は 倒れることもない。



「まったく…どうした? イスカ」



後ろを向いたリンドウは、腰にアタックした少女 桐雪 イスカを見やる。

ついでに、頭を撫でた。



『あのねあのね、リンドーにぃ! イスカね、おはなのほんよんだの!』


「お花の?…あぁ、サクヤにこの前借りてた花の図鑑か。

 それがどうかしたのか? まぁ立ち話もなんだから、入れ入れ」


『うん! おじゃましまーす!』



ちょうど 彼の部屋前だったので、遠慮なく入る。

入隊してからよく遊びに行く(来る)ので、お互い気にしなくなった。



「ほい、ジュース。んで? 図鑑読んで、なんかいいものでも見つけたのか?」


『いいもの…いいもの…?…あ、これ!』


「ん?」



ジュースの入ったコップを机に置き、持ってきていた図鑑をめくるイスカ。


少しして、彼女がリンドウに見せつけたページには…



「……リンドウの…花…?」



紫色の花が 1つの茎から 上向きに沢山咲いている。

それが【リンドウ】という花。

今のこの世には 既に絶滅しているが、図鑑に美しく写っている。


ここにいる彼の名は 雨宮リンドウ。

なので、イスカが何も感じず 見せたわけではない。



「…なんだ、俺の名前と同じ花見つけちまって……サクヤになんか言われたのか?」


『ちがうよーー。ここここ、えっと……は・な・こ・と・ば!』


「…!」



【リンドウ】の花言葉。


それは…



『かなしんでいる、あなたをあいする』


「………」


『…リンドーにぃ、さいきんげんきない…かなしいの?』



イスカは、見た目幼く 中身はさらに幼く。

故に寂しがり屋で、他人の【悲哀】に鋭い。


つい最近の事だ。

幼馴染みである 先程話に出てきた 橘サクヤ。

リンドウが入隊して数年後、彼女もゴッドイーターに志願したのだが、適合する神機がなかった為、オペレーターで入隊。


そして 1週間ほど前、適合神機が見つかり、ゴッドイーターに転向。

つまり、命の危険が格段に上がったということである。



『…これ、サクヤねぇにかりたとき、サクヤねぇ かなしそうなかおしてた。

 ちょうどね、リンドウのはなのページに、しおりはさまっててね。

 それみて、かなしいかおしてた。


 …リンドーにぃも、さいきんおんなじかおしてる…』


「………」



言い終わり、イスカもシュン…となる。

鋭いからこそ、感化されやすい。


だが、いつまでも前に進まないわけではなかった。



『だからね、イスカね、ふたりをあいする!

 あいする【愛する】って、げんきづけること…だよね?

 サクヤねぇも、リンドーにぃも、イスカがまもるの!』


「イスカ…」



少し…いやかなり間違った覚え方をしているが、気持ちは心優しいもの。


充分彼に伝わり、噤んでいた口が 笑みになった。



「…俺としたことが、こんな小さい後輩に 元気付けて貰えるとはな…感謝する、イスカ。

 後な【愛する】の意味は“元気付ける”じゃないからな?」



くしゃりと少女の頭を撫で回し、満面の笑顔。

少なくとも、元気は出たようだ。



『えへへ…ふぇ? そーなの? サカキパパのへやでみてたときにきいたら「そうだよー」っていってたけどなー…』


「(あのおっさんの所為か…)」



くすぐったそうにしながらも、原因を零す。

もちろん、本人はそれが原因なんて気付いていない。



『でもね イスカ、ふたりまもるのかわらないよ!

 ふたりだけじゃなくて…ソーマも、ツバキねぇも、タツミも、みーんなまもるの!』


「おっと、イスカだけにやらせるつもりはないぞ?

 俺も…お互いに みんなを守れば、生存率はきっと上がる。

 なにより、お前を守るヤツがいないしな!…あ、ソーマがいるか」


『ん? ソーマ? ソーマもぜぇーーったいまもるの!』


「おう、そうしろそうしろ! アイツ喜ぶぜ?(…多分、心の中で)」


『ほんと!? わーーい!! そうときまれば、みんなにおしらせするの! リンドーにぃもきてー!』


「分かった分かった、手繋いで行こうなー」



身長差がかなりあるが、ちゃんと手を繋いで 部屋を出た。


サクヤもそうだが、見た人からよく言われる「まるで兄妹だ」と。



【Fin.】

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